2016 Fiscal Year Research-status Report
超高磁場・超高貯蔵密度を実現する革新的高温超伝導コイル化技術に関する基礎研究
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16K14220
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石山 敦士 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00130865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 錫範 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00287963)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電気機器工学 / 超伝導材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、超伝導電力貯蔵装置(SMES)用コイルの超高貯蔵密度化を目的としている。SMESは長寿命且つ大電力の瞬時応答が可能という特長を有するが、貯蔵密度がLiイオン電池等と比べ大きく劣っている。そこで本研究では、Liイオン電池を凌駕する貯蔵密度(600kWh/ m3)を実現することにより、現状のSMESの短時間(秒単位)・大出力貯蔵装置(瞬低補償用)という位置づけから、分単位(負荷標準化)、時間単位(揚水発電の代替)にまで応用範囲を広げることを目指すこととした。このようなSMESを実現するためのコイル仕様を試算した結果、50T程度の超高磁場の発生、500 A/mm2を超える電流密度、5GPa(フープ応力)を超える機械強度を達成しなければならないことがわかった。そこでここでは、これらの数値目標を達成するためのコイル化技術として、先行研究で提案した超高強度コイル支持構造「Super-YOROI」と、高電流密度化と高熱的安定化の両立を可能とする「層間電気抵抗制御技術」を開発・適用することにより、目的とする超高貯蔵密度コイルの実現可能性を検証することを目指してきた。本年度は、まずSMES実規模を想定したm級大口径コイルを対象にSuper-YOROI構造を適用した時の応力分担効果を評価した。その結果を踏まえ、Super-YOROI構造の巻線部を複数に分割することで応力を分散させることにより補強効果を高められることわかった。そこでm級分割型Super-YOROIダブルパンケーキコイルを100個積み重ねたコイルシステムを対象として、応力限界の評価を行った結果、約90kW/m3が達成可能であることが示された。現在、得られたコイル構造に「層間電気抵抗制御技術」を適用する場合に必要となる層間電気抵抗の適正値を、代表者らが開発した数値解析プログラムを用いて決定する検討に入った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で開発・提案した「YOROI構造コイル」は、巻線が受ける電磁応力をコイル外枠を介して、上下側板へ伝えることで応力分担する機構を持つが、目標値5GPa以上の機械強度を達成することが困難であった。そこで新たに「Super-YOROI構造」、すなわち内枠を新たに設け、これも含めて上下側板に応力を分担する構造の採用により高機械強度の実現を試みた。まず「Super-YOROI構造」を、SMES実規模を想定したm級大口径コイルに適用した場合の強度限界を評価した結果、REBCO線材の強度限界である引っ張り応力800MPaとひずみ0.4%を満たすことができないことがわかった。そこで、コイル巻線部を分割し、コイル間にも補強構造を挟む「分割型Super-YOROI構造」を新たに考案し評価を行った。その結果、REBCO線材の強度限界以下に抑える応力分担支持が可能であることが示された。さらに「分割型Super-YOROI構造」を適用したダブルパンケーキコイルを100個積み重ねたコイルシステム(試設計)を対象として、貯蔵密度向上の可能性を検討した結果、約90kW/m3が達成可能であることが示された。この値は、最終目標値である600kWh/ m3より低い値であるが、「YOROI構造コイル」を適用した場合に比べて15倍の貯蔵密度のSMESの実現可能性があることが確認できた。層間電気抵抗制御技術については、高機械強度化の検討で試設計された多層コイルシステムを対象に層間電気抵抗の適正値を決定するため、代表者らが無絶縁コイルの過渡特性解析用として開発した数値計算プログラムの修正を進めた。なお、本年度は数値解析による検討が主となったため(それによって新しい提案ができたが)、予定した評価実験については次年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
「分割型Super-YOROI構造」を適用したSMES用実規模コイルシステムのための設計最適化を進め、最終目標値である600kWh/ m3の達成を目指す。そして、得られたコイル巻線支持構造を持つコイル巻線に、電気絶縁を有しないREBCO線材で巻線した「無絶縁コイル巻線方式」を採用したときの層間電気抵抗の適正値を、SMESの実運転(運転電流パターン)を考慮して決定する方法の検討を数値解析に基づき進めていく。そして最終的に、本研究の目的である超高磁場・超高貯蔵密度を有するSMESの実現に向けて、本研究課題で提案・開発するコイル化技術の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
当初計画に記した超伝導コイルの高強度化技術をさらに発展させた新しい支持構造の提案がてき、それに基づいて目標値に近い貯蔵密度を持つSMES用コイル構造を示すことができた。これらの数値解析に基づく検討に加え、検証実験として当初の予定では、主として得られたコイル巻線構造に無絶縁コイル巻線方式を採用したときの振舞いを評価(高熱的安定化と高電流密度の両立の可能性の評価)するための実験を予定していたが、それについては次年度実施することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行うこととした検証実験のため、主として実験に必要となる消耗品費と謝金が繰り越し分となった。当初の計画にあった次年度分研究費については予定どおり使用する。
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Research Products
(2 results)