2016 Fiscal Year Research-status Report
チューナブルトポロジカル絶縁体を用いた純スピン注入源の開発
Project/Area Number |
16K14228
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
PHAM NAM・HAI 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50571717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)分子線エピタキシー結晶成長技術を使って、GaAs(111)A基板の上に幅広い組成を持つBiSbトポロジカル絶縁体単結晶薄膜の結晶成長に成功した。X線回折および反射型高エネルギー電子線回折からBiSb(001)単結晶がエピタキシャル製膜したことを確認した。また、BiSbの電気伝導率が他のトポロジカル絶縁体よりも一桁高く、スピン流源として非常に有望であることを明らかにした。さらに、Sb組成の調整により、トポロジカル絶縁相(Sb組成0-35%)と半金属相(Sb組成35%以上)を作り分けることができた。特に、絶縁状態はバルクのSb7-25%領域よりも広いことが分かった。これは、BiSb薄膜の量子閉じ込み効果によって、バルクよりもバンドギャップが広がり、バルクの半金属領域においても、薄膜では絶縁状態になりえることを明らかにした。 (2)電気伝導の温度依存性および膜暑依存性を系統的に調べ、トポロジカル絶縁相のBiSb薄膜では、膜厚が薄い場合、界面の金属状態が電気伝導に支配的であることが確認できた。 (3)さらにBiSb薄膜の上に、垂直磁気異方性を示すMnGa薄膜とのヘテロ接合の製膜に成功した。また、MnGaを製膜してから、その上にBiSbを製膜できることにも成功した。これにより、BiSbのスピンホール効果による磁化スイッチングの実証条件が整った。 (4)面内磁気異方性を示す単結晶MnSb/BiSbのヘテロ接合の製膜に成功した。これにより、磁気共鳴法によるBiSbのスピンホール効果の評価ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、半導体基板と結晶構造および格子定数が異なるにも関わらず、幅広い組成を持つBiSb薄膜のエピタキシャル結晶成長に成功した。さらに、BiSbと垂直磁気異方性を示すMnGa薄膜および面内磁気異方性を示すMnSb薄膜のヘテロ接合の作成にも成功し、計画よりも1年以上速く研究が急進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)BiSb/MnGaヘテロ接合において、電流による磁化スイッチングの実証を行う。具体的には、直流電流あるいはパルス電流を使って、BiSbのスピンホール効果により、MnGaに純スピン流を注入して、従来のスピン注入磁化反転法よりも1桁少ない電流密度でMnGaの磁化スイッチングを実証する。 (2)MnSb/BiSbヘテロ接合において、磁気共鳴法を使って、BiSbのスピンホール角の評価を行う。具体的には、MnSbの磁気共鳴におけるBiSb逆スピンホール効果の電圧を評価する方法、MnSbの共鳴半値幅を評価する方法、BiSbに交流電流を印加してMnSbの歳差運動を評価する方法のいずれを実行する。 (3)以上の実験を様々なSb組成および膜厚のBiSbにおいて系統的に行い、BiSbのスピンホール効果の物理的な起源を解明する。
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