2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14244
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水上 成美 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (00339269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 和也 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (20734297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン注入発振 / テラヘルツ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属磁性体と非磁性金属の層構造から成る磁気抵抗素子をナノスケールに加工し電流を流すと、スピン注入効果により磁性体の磁化の自励歳差運動が生じる。この現象はスピン注入発振と呼ばれる。様々な基礎・応用研究が行われているものの、その発振周波数は最大でも45 GHz程度である。研究代表者らは、これまでテラヘルツ波帯域の磁化歳差周波数と小さい磁気の摩擦を示すマンガン系磁性体を発見し、ごく最近その極薄膜形成に成功している。そこで本研究では、この材料のユニークな特性を素子に適用することで、テラヘルツ波帯域に迫る0.1 THzのスピン注入発振を実証することを目的とする。以下にH28年度の研究の実績について記す。 まず、マンガンガリウム極薄膜の結晶性と界面平坦性の向上を狙い、成長温度などを最適化することで、極薄膜領域においても高磁気異方性・低ダンピング定数を示すマンガンガリウムナノ層の形成を試みた。その結果、ダンピング定数が0.01-0.02程度であり、垂直磁気異方性の大きさが3テスラ程度の極薄膜を得ることができた。この垂直磁気異方性は約90 GHzの磁化才差周波数に対応するものである。一方、低ダンピング定数が得られる成長温度では表面形状が劣化することが判明したが、製膜後熱処理を併用することで平坦かつ低ダンピングを示す、磁気抵抗素子に適した極薄膜を得られることが新たに分かった。 次に、このナノ薄膜成長技術を用いて、マンガンガリウムをベースとするナノスケールトンネル磁気抵抗素子を作製し、スピン注入整流効果(スピントルクダイオード)を用いてマンガンガリウム層の磁化歳差運動を調べた。磁気抵抗効果を稼ぐため、界面に1-2 nmのFe層を挿入した素子では、50-100 GHzの高周波領域付近で磁性層の歳差運動に伴う信号を観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、マンガンガリウムの極薄膜の作製条件を最適化することで、極薄膜領域においても低ダンピング定数を得るための知見を得た。また素子の作製・評価を進めることでスピン注入整流効果による高周波信号を検出できた。これらは、大きな成果であり、非常に順調に進展しているといえる。 他方、本計画では、平成28年度内に素子の詳細なデータまでを取得する予定であったが、計画外の微細加工施設の移設があり、系統的な実験がまだ行えていない。この点を踏まえて、おおむね順調に進展している、という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から継続し、トンネル磁気抵抗素子の作製を加速し系統的なデータを取得、成果発表を行う。並行して、平成28年度の成果をベースとした当初計画通り研究を継続することで、本研究の目標を達成できると考えられる。 具体的には、すでに得られている低ダンピング定数と高磁気異方性を備えたマンガンガリウムナノ薄膜をフリー層とする金属型巨大磁気抵抗素子を作製する。数パーセント以上の磁気抵抗比を得るため、十分な検討を行う。さらに、それを微細加工したナノ磁気抵抗素子を作製し、高密度のスピン注入を行うことで、テラヘルツ波領域に迫るスピン注入発振の観測を推進する。
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Causes of Carryover |
本研究で計画しているトンネル磁気抵抗素子の作製に用いる微細加工機器・設備の移設があり、研究計画の一部が未達であった。これは当初計画していなかったことであり、そのために、予算使用計画が当初よりも遅れてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に未達であった素子の詳細な研究を上半期に平行して実施する。繰り越し予算はその研究の実施に充当する。 新規移設後の微細加工室は使用時間がこれまでよりも長く確保でき、かつフレキシブルである。そのため、上記計画は、平成29年度計画と並行して実施でき、研究計画や予算使用上の問題はないと考えられる。
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Research Products
(7 results)