2016 Fiscal Year Research-status Report
メタマテリアルにおける空気の非線形性を利用したモノサイクルパルス電磁波の自励発振
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16K14249
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
玉山 泰宏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50707312)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 電磁波 / プラズマ / 非線形現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極低群速度伝搬を実現するメタマテリアル中で発生する気体の絶縁破壊を利用した、パルス電磁波の自励発振を目的としている。今年度は、自励発振のための予備実験として、メタマテリアルに入射させる電磁波の振幅に変調をかけ、強制的にパルスを発生させる実験を行った。具体的には、2台の信号発生器からパワーが同じで周波数がわずかに異なる電磁波を発生させ、両者を重ね合わせてメタマテリアルに入射させた。すなわち、振幅が正弦波的にゆっくりと変化する電磁波をメタマテリアルに入射させた。そして、透過した電磁波を2つに分け、一方に対しては検波ダイオードとオシロスコープを用いることにより包絡線波形の観測を行い、もう一方に対してはスペクトラムアナライザを用いることにより周波数成分の測定を行った。さらに、メタマテリアル中に発生するプラズマからの発光強度の時間変化も同時にオシロスコープで観測した。その結果、入射波の振幅変化に応じてメタマテリアル中でプラズマの生成・消滅が発生し、それに応じて、メタマテリアルの透過特性が変化する様子が観測できた。ここで、条件によっては、プラズマ発生の瞬間に時間幅の短いパルスが発生する様子も確認できた。また、透過波のスペクトルは2つの入射波の周波数成分の他に多数のサイドバンドが等間隔で発生したようなものが得られるということもわかった。ここで、得られるサイドバンド成分のパワーのパラメーター依存性について検討したところ、1周期当たりのプラズマ生成時間の割合のみでおおよそ決まるということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標としては、入射電磁波の振幅を時間的に変化させることにより、メタマテリアル中のプラズマ生成が制御できることを確認するとともに、プラズマ生成の瞬間にメタマテリアルに蓄えられたエネルギーが短時間で放出されるのを観測するというものであった。パワーが同じで周波数が異なる2つの電磁波を重ね合わせて入射波の振幅を正弦波的に変化させることにより、メタマテリアル中でプラズマの生成・消滅が周期的に繰り返されることを確認できている。ここで、プラズマの生成状態は透過波の包絡線波形とプラズマからの発光強度の時間変化の両面から矛盾のない形で確認できている。また、プラズマ生成の瞬間にメタマテリアルから時間幅の短いパルスが放出される現象についても、放出されたパルスの大きさは予想より小さいながらも、確かに観測できている。また、メタマテリアルの非線形応答の結果として生じるサイドバンド成分の大きさの入射パワーおよび気体圧力に対する依存性についても、簡単なモデルを用いて説明することに成功している。ここで行った実験において得られた結果を用いることにより、次年度に行う、メタマテリアルにおける電磁波パルスの自励発振実験のための実験系を設計することができる。それと同時に、これらの結果は、メタマテリアルにおける非線形現象の実現に関する研究という観点からも十分意義のあるものであると言うことができる。これらのことから、本研究は、おおよそ予定通り進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験を行っている最中に、当初の予測ではより高パワーの電磁波をメタマテリアルに入射させた場合にしか生じないと考えていた現象がしばしば観測された。この現象は非常に強い非線形性を示したため、まずは、この現象の起源を明らかにし、再現性良く発生させるための手法を明らかにすることを行う。これは、電磁波パルスの自励発振に直接的にはつながりはないかもしれない。しかし、メタマテリアルを用いた非線形現象の高効率発生は世界的に見ても重要な研究課題である。この現象の発生条件とその物理を明らかにすることにより、新しい非線形現象の高効率発生手法が見出せると考えている。また、この実験を行うにはそれほど時間はかからないため、当初の研究計画の遂行に大きな影響を与えないと考えている。そのため、計画を変更して上記実験を追加で行う。その後に、元々行う予定であった電磁波パルスの自励発振の実現に取り組む。電磁波パルス自励発振実現のためには、メタマテリアルの応答にフィードバックをかけて、メタマテリアル中でのプラズマ生成状態を、ある種の不安定状態にさせる必要がある。本年度に得られた結果を基にして、フィードバックループのゲインを決定し、実験系の構築を行う。メタマテリアル周囲の気体圧力を変化させながら自励発振の特性、すなわち、メタマテリアルを透過する電磁波の包絡線波形、スペクトル、および、プラズマからの発光強度波形を観測することにより、短パルス発生が実現できる条件を見出す。
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Research Products
(2 results)