2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノ界面磁壁の制御と3次元シフトレジスターへの応用
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16K14257
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松山 公秀 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (80165919)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / スピンエレクトロニクス / 磁性薄膜 / 磁気記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 界面磁壁の 3次元シフトレジスター機能に適した材料系探のため,垂直磁気異方性層と面内磁気異方性層とを交互に積層した種々の多層膜を作製し,構造及び磁気特性の評価を行った.成膜にはタンデム型多元マグネトロンスパッタリング装置を用い,PC制御によるシャッター開閉機構により原子層オーダーでの層厚制御を行った.材料系の一次候補として,磁性細線における1次元転送で実績のあるCo/Ni, Co/Pd等の人工格子膜に着目し,核形成磁界Hnと磁壁抗磁力Hwの比を,磁壁情報安定性と低電力磁壁転送との相反要求に対する性能指標として層構成の適正化を行った.これらの人工格子系についてHn,Hw,Hn/Hwの下地金属層(Ti/Au)厚さ依存性を明らかにした.また,Co層厚をパラメータとした種々の多層膜の磁気ヒステリシス特性を,VSM及び極Kerr効果測定により評価し,垂直磁気異方性膜中に局所的な面内磁気異方性領域が形成される臨界層厚を定量的に明らかにした.
2) マイクロマグネティクスシミュレーションにより,界面磁壁を熱擾乱に抗して安定に保持可能な異方性変調強度,及び,保持された界面磁壁を駆動するために必要な電流密度を明らかにした.また,結晶構造配置した磁性原子間の交換相互作用,及び各磁性原子の磁気異方性エネルギーを定式化し,原子レベルでのスピン配列構造を解析可能なスピニクスシミュレーションを開発した.これにより,積層界面近傍における磁壁構造,磁壁エネルギー変調強度,スピン偏極電子との相互作用等の詳細を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通して,3次元シフトレジスターの実現に必要な膜面垂直方向に沿った磁気異方性変調技術を開発すると共に,比較評価した種々の材料系の名から1次候補を選定する等,本研究目的の達成に向けた有用な知見が得られた.また,磁壁のシフトレジスター動作を検証するための素子作製技術を立ち上げ,微細加工素子における磁気ヒステリシス特性をマイクロKerr効果顕微鏡とVSMにより測定する等,動作実証実験に向けた実験系の整備と基礎データの蓄積を行った.以上の材料系探索,評価実験系の構築に加え,計算機シミュレーションによる素子設計及び基本動作の確認を行うなど,ほぼ当初の研究計画通りの成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
1) プレーナ構造の極端パルス磁界発生器を微細加工により形成し,パルス磁界印加後の磁化状態を極Kerr効果測定により評価することで,膜厚方向へのビットシフト動作を検証する.諸条件の適正化段階においては,磁壁のビット転送に要する十分な駆動力を印加出来ないことも想定されるため,外部バイアス磁界を補助的に用いることにより磁壁移動の際のエネルギー障壁を低減する.多層化に伴い,極Kerr効果測定では下層部分の磁化状態が検出困難となるため,ネットワークアナライザを用いたFMRスペクトラム測定を並行して行う.各層のFMR周波数が界面磁壁の有無により異なることを利用し,ピーク強度比から磁壁の集積状態を評価する.
2) 本年度に開発した原子スケールのスピニクスシミュレーションと磁壁幅スケールのスピニクスシミュレーションを統合したマルチスケールシミュレーション技術を確立し,磁性体モデルの精度向上を図ると共に,実用的計算資源と計算時間で実行可能なデバイスシミュレーションコードを作製し,界面磁壁転送路の材料及び構造設計に供する.
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