2017 Fiscal Year Research-status Report
AlGaN/GaNナノ結晶光共振器を用いた有機半導体レーザの開発研究
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16K14260
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
菊池 昭彦 上智大学, 理工学部, 教授 (90266073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光デバイス / 有機半導体レーザ / 有機半導体 / 窒化物半導体 / 光共振器 / GaN |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、レーザ媒質に用いる有機半導体薄膜単結晶の成長技術開発、静電塗布法による有機ナノ粒子生成条件の検討、窒化物半導体ナノ構造共振器に向けた低損傷ナノ加工技術の開発、構造乱れに対する高ロバスト性を有するトポロジカルフォトニック結晶導波路の理論検討など、有機・無機複合構造共振器レーザに向けた要素技術に関連する研究を行った。具体的な成果と意義を以下に記す。 1.不揮発性あるいは極低蒸気圧液体薄膜を結晶成長場に用い、静電塗布法で溶質を含んだ溶液を極微細ミストとして供給して有機半導体薄膜単結晶を析出させる新しい結晶成長技術と薄膜単結晶への精密な濃度制御が可能な分子ドーピング法を開発した。また、結晶成長場をガラス板や金属板に挟まれた狭空間に限定するマイクロギャップを用いる溶液結晶成長と昇華結晶成長の手法を用い、有機半導体レーザに適した形状の薄膜単結晶を成長可能であることを検証し、デバイス構造作製に向けて進展した。 2.静電塗布法により発光層や電荷注入層としての利用が期待される有機ナノ粒子の生成条件を調査した。低誘電率添加溶媒は噴霧液滴の帯電量を制御して直径分布の単峰性化に寄与し、溶質濃度によりナノ粒子の直径制御が容易に実現できることを示した。 3.GaN系半導体結晶を用いてフォトニック結晶やファブリペロー型共振器を形成するための水素雰囲気異方性熱エッチング法の条件を調査し、NH3ガス添加による垂直エッチングや5nm程度のSiO2選択エッチングマスクの極薄化の条件を見出し、光共振器形成に必要な高精度エッチング条件を把握した。 4.トポロジカルエッジ状態を用いる低損失共振器の可能性を検討するため、FDTD法による理論検討を行い、作製が容易な円形開口を組み合わせたフォトニック結晶においてもフォトニックバンドギャップやディラックコーンが形成されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に向けて研究実施順序の調整を行い、2017年度は有機半導体レーザの実現において特に重要な要素技術である有機半導体薄膜単結晶の成長条件の確立に注力した。その結果、不揮発性溶媒薄膜の結晶成長場と静電塗布による溶質供給を組み合わせた新しい結晶成長法が開発され、さらに高効率なレーザ発振に有効な分子ドーピング手法も適用可能であることが見出されて目標に向けて大きく進捗した。また、マイクロギャップを用いる溶液法と昇華法による2つの有機薄膜単結晶成長法でもレーザ構造に適した薄膜単結晶が得られることが実験的に検証された。特に、昇華法は単結晶ヘテロ構造の形成が期待されるため、予定外の進捗が得られたといえる。また、新しいレーザ媒質の候補として有機無機ハイブリッド系ペロブスカイト(MAPbBr3)を用いた薄膜単結晶成長と発光特性の評価を計画に加え、薄膜単結晶の成長条件と原料純度が発光特性に大きく影響することなどを見出しており、有機単結晶成長技術の開発は予定以上に順調に進捗した。また、窒化半導体による光共振器構造の作製技術もほぼ予定通りに進捗した。 上記研究計画の一部優先に伴う順序調整を行った結果、窒化物半導体光共振器上への有機材料成膜と電流注入発光特性の実験を最終年度に移行したことから、進捗状況を「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、有機半導体の電流注入レーザ発振を阻害する課題である「高いレーザ発振しきい値」、「電極による光吸収」、「大電流密度による劣化」などを、窒化物半導体を用いた高Q値共振器と電荷注入層、および有機単結晶の利用により解決する可能性を実証するための研究を行い、本研究課題の目標の達成を目指す。 1.電磁界解析により、有機半導体と無機半導体の積層構造における導波モードや共振器構造の解析を継続して行い、レーザデバイス構造の最適化を行う。 2.無機材料で形成した光共振器上に有機半導体を成膜し、高出力紫外線レーザ励起によるレーザ発振特性の評価を行う。色素ドープ有機単結晶やペロブスカイトなど複数の有機材料を用いてASE特性を調べ、レーザ媒質としての適性を評価する。有機薄膜単結晶成長技術の改良を進め、位置制御や大型基板化など、デバイス作製に適した有機結晶の成長技術を確立する。 3.GaN、ITO、ZnOなどの無機半導体上に有機半導体を堆積したハイブリッド構造における電流注入特性の評価を行い、自己配列双極子分子やMgZnO、CaCO3などの中間層材料による電荷注入障壁の低減効果を検討する。高電流パルス電源や発光特性評価装置を整備し、共振器部への選択的な電流注入の状態をEL発光像から評価し、電流注入構造の最適化を行う。 4.研究で見出された有望なレーザ構造を有する有機/無機複合型半導体レーザ構造を用いて、パルス駆動によるkA/cm2レベルの高電流密度条件化における電圧-電流特性、電流-発光特性、発光像などの基本特性を総合的に評価し、電流注入有機半導体レーザの実現における課題を明らかにし、その実現に向けた技術課題の解決に挑戦する。
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Causes of Carryover |
電流注入発光特性評価に関する研究実施時期を最終年度に移行したため、不活性ガス循環装置を備えたグローブボックスの整備のための酸素吸着剤の購入を見送った。また、海外学会に投稿予定であった成果を国内学会への投稿に変更したため旅費が予定額以下となった。これらの理由により次年度使用額が生じた。次年度は、酸素吸着剤、有機半導体材料、海外出張旅費としての使用を計画している。
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Research Products
(24 results)