2016 Fiscal Year Research-status Report
空間分割多重信号を共有するための空間相関を利用したデータ圧縮
Project/Area Number |
16K14268
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
梅原 大祐 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (50314258)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空間分割多重 / 端末共同干渉キャンセラ / デジタルデータ転送 / 空間相関 / データ圧縮 / 線形予測符号化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数のアンテナを有する基地局から少数アンテナを有する移動端末群に大量のデータを含む空間分割多重(SDM)信号を伝送することを想定する。このとき、近傍の移動端末群が受信信号を高い周波数帯を用いて共有することで、基地局からのSDM信号を分割する技術が端末共同干渉キャンセラである。本研究では、各移動端末における受信SDM信号の空間相関を利用したデータ圧縮を目的としている。最初に、量子化誤差と空間相関を有する端末共同干渉キャンセラの通信路容量の導出手法を確立することに取り組んだ。信号共有時に生じる量子化誤差は、直交周波数分割多重(OFDM)で変調した受信SDM信号の復号するときに、ガウス雑音として近似できることを数理的に明らかにした。空間相関モデルとしてクロネッカーモデルを採用して、送信アンテナ間と受信アンテナ間の空間相関行列をもとに疑似乱数を用いてチャネル行列を生成できるようにした。量子化ビット数と送受信アンテナの空間相関行列が与えられたときの端末共同干渉キャンセラの通信路容量をモンテカルロ法により導出するプログラムを作成した。与えられた量子化ビット数と送受信のアンテナ間の相関行列に対して端末共同干渉キャンセラ通信路容量を評価した結果、空間相関が高いときのほうが量子化ビット数を削減するストラテジーがより有効になることを明らかにした。すなわち、空間相関が高いほうが本質的にデータ圧縮が可能であることを示唆している。次に、端末共同干渉キャンセラを実装するために4.45GHz帯と12.9GHz帯のデュアルバンドアンテナを製作した。ソフトウェア無線プラットフォームUSRP X310とデュアルバンドアンテナを用いて、実験により送信アンテナ間と受信アンテナ間の空間相関行列を実測することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論面では、量子化ビット数と空間相関行列を導入した通信路容量の導出手法を確立した。量子化誤差のモデル化及びその通信路容量の導出手法への組み込み自体が当初想定していない新規の研究テーマとなった。また、線形予測符号化によるデータ圧縮を定式化したところ、データ量の大幅な圧縮を図るためには受信アンテナ間の空間相関行列が高い空間相関を有する必要性があることが判明した。しかしながら、端末共同干渉キャンセラでは、受信アンテナを有する移動端末が離れていて受信アンテナ間の空間相関が低いものと予想されるため、線形予測符号化だけではなく推定チャネル係数を利用して仮想的に空間相関を高めたデータ圧縮法を検討中である。そのため、データ圧縮手法の確立には若干の遅れが生じている。実装面では、新たな周波数帯を用いるため、その周波数帯で放射効率の高い無指向性アンテナを製作した。また、実験に基づく空間相関の正確な測定のため、製作アンテナの詳細な特性データを電波暗室を用いて測定した。そのため、空間相関の実測には若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、空間相関を利用した線形予測符号化を進めるとともに、大きなデータ圧縮効果の実現を目指して、推定チャネル係数を利用して仮想的に空間相関を高めたデータ圧縮手法を確立する。仮想的に空間相関を高めたデータ圧縮手法の有効性を確認するために、事前にシミュレーションにより送信アンテナ数と所要量子化ビット数の関係を明らかにする。実験面では、空間相関の実測データの蓄積とともに、理論面で検討したデータ圧縮手法の実装を進める。
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Research Products
(7 results)