2016 Fiscal Year Research-status Report
機械学習と非線形回路自動合成に基づく高周波デバイスモデリング
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16K14269
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
天川 修平 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (40431994)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デバイスモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の高周波デバイスモデリングとは異なるアプローチとして,Chuaの提案した公理論的回路理論を活用することを試みた.この理論は非線形回路までカバーするが,今年度は手始めに線形素子のモデリングを行うこととし,伝送線路のモデリングを行った.伝送線路を1 GHz程度から300 GHz程度まで実測すると,線路を形成する誘電体(絶縁体)の誘電率の実部はほぼ周波数に依存しない一方,誘電率の虚部は周波数に依存するという結果が得られる.ところが,通常の抵抗器,インダクタ,キャパシタ(RLC)を組み合わせて作ったモデルでそのような特性を再現することは難しい.そこで,「周波数依存線形抵抗器」を組み込んでモデル化を行うことを提案した.この素子は抵抗値が周波数に依存する.素子に恣意的な周波数依存性を与えると因果律を破ることが多いが,この素子は理論的に見出された素子であり,そのような問題がない.通常のRLCとともに周波数依存線形抵抗器を使って伝送線路のモデルを構築し,65 nm CMOSプロセスで試作した伝送線路3品種のモデリングを行ったところ,実測される周波数依存特性をうまく再現することができた. 高周波モデリングの基礎となる測定・シミュレーションデータに関する検討として,電磁界シミュレータの算出するSパラメータの定義について考察した.Sパラメータには互換性のない複数の定義があり,定義によって意味が違うので,自分の利用しているシミュレータがどの定義のSパラメータを採用しているか把握していなければならない.ところが,Sパラメータに複数の定義があること自体あまり認知されておらず,シミュレータのドキュメントを見て必要な情報が得られることはまれである.そこで伝送線路構造の電磁界解析をもとにSパラメータの定義を判別する手法を考案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,当初それほど重視していなかった線形素子のモデリングから着手し,一定の成果を上げることができた.現在のところ,モデル構築はアドホックな方法で行い,回路合成で行ったわけではない.今回の試みの結果,周波数依存線形抵抗器等を含む場合,既存の線形回路理論で知られている回路合成手法をそのままでは適用できないことがわかった.対応の仕方はある程度わかっており,先へ進むための道筋は見えている.当初の予定とはやや違った方向とはいえ,高周波デバイスモデリングの成果があり,新たな研究課題を見出し対処法も見えており,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を受け,既存の線形回路理論ではカバーされていない各種の周波数依存線形素子を含む場合の回路合成のやり方について検討する.また,周波数依存線形素子の回路シミュレーション用実装について検討する.さらに,この成果を活用して当初予定していた非線形素子のモデリングについても検討を行う.非線形回路素子への対処は線形の場合がうまくいって初めて可能となるので,線形素子のモデリングに関する成果は強力な武器になるものと期待される.
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Causes of Carryover |
データ整理等のための人件費・謝金を計上していたが,雇用を行わなかったため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表のための海外出張があるので,旅費と参加費にあてる.
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