2016 Fiscal Year Research-status Report
無線センサネットワークにおける反射型遅延トモグラフィを用いた移動物体トラッキング
Project/Area Number |
16K14270
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
原 晋介 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80228618)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 無線センサネットワーク / ネットワークトモグラフィ / 反射型 / 透過型 / 圧縮センシング / 障害リンク |
Outline of Annual Research Achievements |
環境モニタリング等に応用される無線センサネットワークでは,広い領域に撒布された無線センサノードがメッシュ型のマルチホップ通信で互いに接続される.従って,データ収集ノードは,各ノードがセンスして得た環境データを定期的に収集するだけでなく,例えば,ループを形成するルートを選択してプローブパケットを送信し,それを受信するまでのルート遅延を観測することにより,そのルート上でのリンクの障害の有無が推定できる.反射型ネットワークトモグラフィは,そのような観測ルートをうまく複数選択し,障害リンクを同定することを指し,圧縮センシングの理論をさらに応用すれば,観測ルート数を小さくできる.圧縮センシングに基づいたネットワークトモグラフィの問題点は,透過型と反射型にかかわらす,ノード数が大きくなるとルート候補数が膨大となり,それらの中から適当な観測ルートを選択する問題が極めて困難となることである.また,リンク障害の原因が害獣の侵入等によるリンクの物理的な障害であるとすると,害獣の移動に伴って障害リンクの位置も移動するはずである.従って,ネットワークトモグラフィにより障害リンクを同定した後は,障害リンクの位置をトラッキングする必要がある. 本研究に関する平成28年度の主な研究成果は,透過型ネットワークトモグラフィに対して,観測ルート選択法を提案し,その性能を計算機シミュレーションにより明らかにしたことと,反射型ネットワークトモグラフィに対して,ルート候補構成法を提案し,その性能を計算機シミュレーションにより明らかにしたことである.どちらの方法もノート数の増加に対してスケーラブルで,ルート候補の構成時間および観測ルート選択時間は大きくならない.さらに,より少ない観測ルート数で,障害リンクを効率良く正確に同定できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワークトモグラフィの問題の一つは,ノード数が多くなった場合に,ルートの候補数が膨大となり,それらの中からの観測ルート選択が困難になることであった.従って,スケーラブルなルート候補集合の構築法とスケーラブルな観測ルート選択法が透過型と反射型に求められている. グラフ上で異なる2つのノードが与えられた場合に,それらの間のすべてのルートを効率良く列挙する方法としてSIMPATHアルゴリズムがKnuthにより提案されている.我々は,まず,このSIMPATHアルゴリズムのグラフの表現形式であるZDD (Zero-suppressed binary Decision Diagram)の特徴をうまく活用した,透過型ネットワークトモグラフィに対する観測ルート選択法を提案し,その性能を計算機シミュレーションにより評価した.この提案アルゴリズムはスケーラブルであり,満足のいく性能が得られたので,研究の一つの目標である「透過型ネットワークトモグラフィに対するスケーラブルな観測ルート選択法の構築」が達成できたと考えている. また,与えられたグラフに対して,グラフ上のすべてのノードと仮想的に接続されたノードを1つ付加し,SIMPATHアルゴリズムを用いれば,反射型ネットワークトモグラフィに対して効率良くルート候補集合を構成できることを見出した.この提案アルゴリズムもスケーラブルであり,満足のいく性能が計算機シミュレーションにより得られたので,研究課題のもう一つの目標である「反射型ネットワークトモグラフィに対するスケーラブルなルート候補の構築」が達成できたと考えている. 以上,上で述べた2つの結果より,我々の研究は,おおむね順調に進展していると結論付けることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
透過型ネットワークトモグラフィに対する観測ルート選択法は,SIMPATHアルゴリズムによりルート候補集合を構築した後,そのグラフ表現形式であるZDDの特徴をうまく利用して,適当なルートをルート候補集合から効率良く選択している.今後は,SIMPATHアルゴリズムと観測ルート選択を合体させた,つまり,ルート候補集合を構築する過程で,適当なルートを観測ルートとして選択していくことができるアルゴリズムを研究する.その方がアルゴリズムがさらにスケーラブルになるはずである. 透過型に対して研究した観測ルート選択の考え方を,反射型に適用し,反射型ネットワークトモグラフィに対して,SIMPATHアルゴリズムを使った後のスケーラブルな観測ルート選択法をまず研究する.その後に,SIMPATHアルゴリズムと観測ルート選択を合体させた,さらにスケーラブルな観測ルート選択法を研究する.これにより研究の一つの最終目標である「反射型ネットワークトモグラフィ対するスケーラブルな観測ルート選択法の構築」が達成できる. その後,切断リンクの移動と,ネットワークトモグラフィを用いたそのトラッキングを研究する.研究提案時には,実機による性能検証を予定していたが,いくつかの要因によりそれが困難となったため,提案法の性能検証は計算機シミュレーションにより行うことにする.ただし,計算機上に構築する仮想環境は,切断リンクの物理的な移動と無線電波伝搬に対して,実環境で起こりうる事象をなるべく忠実にモデル化し,実環境に近いものになるようにする.
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Research Products
(13 results)