2016 Fiscal Year Research-status Report
周波数掃引バイブロドップラ逆合成開口イメージング技術の創出
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16K14273
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三輪 空司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (30313414)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イメージング / 合成開口 / 加振 / ドップラ計測 / 固定センサ / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄筋コンクリート構造物の維持管理では、遠隔的に壁面のひび割れ等を調査可能な高分解能な調査法が注目されているが、空間的なスキャンを伴うため、広範囲を迅速に調査可能な一次スクリーニング法の開発が求められている。これまで我々は単一周波数加振により計測対象に振動を与え、それに伴い、対象が振動を別のセンシング波のドップラ効果としてとらえ、ドップラ周波数成分を計測するバイブロドップラ計測を提案し、加振周波数を随時変化させれば、等価的に計測対象の傾きを制御できることを見出した。これにより、固定計測系において計測対象の回転と等価な逆合成開口処理が可能になるとと考えられる。そこで、本研究では、周波数掃引バイブロドップラ計測法により、固定センサにおいて遠方から反射率の空間分布を計測する手法を創出し、超音波を用いた基礎実験を通じて二次元映像化手法の原理検証を行い、非破壊検査への応用を検討することにある。 本年度は主に1次元の対象表面の1次元反射率分布推定に関して,以下の3つの要素技術に関して検討を行った。計測対象が孤立した反射体ではなく、表面の傷となることで、①『逆合成開口の理論検討』が必要であり、その空間分解能等の影響を定式化する必要がある。また、本手法を2次元に拡張する上で、直交する2方向から平面波を伝搬させる必要があり、その基礎検討として平面波加振可能な②『加振法の検討』を行った。さらに、表面の傷の計測では、傷からの散乱波に加え、表面からの鏡面反射成分も計測されるなど、孤立した反射体とは異なる状況が考えられるそのため、寒天を対象表面俊、その表面に傷をつけ傷の1次元的なイメージングが可能かの③『超音波による原理検証実験』を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は、逆合成開口の理論検討として、物体表面の傷を計測対象とし、周波数掃引によるバイブロドップラ計測における1次元反射率分布推定に関して,以下の3つの要素技術に関して検討を行った。 ①『逆合成開口の理論検討』 周波数掃引によるバイブロドップラ信号、逆フーリエ変換による空間分布推定について、理論的な定式化を行い、空間分解能に関して検討した。また、その分解能は掃引する加振周波数の帯域幅によって定まることを明らかにした。表面の傷の場合、表面の鏡面反射と傷からの散乱波の2種類が計測されるが、数値シミュレーションにより原理的に本手法の有効性を示せた。このため理論検討については、当初目標を達成できた。 ②『加振法の検討』 本手法では、加振波を平面波として伝搬させ空間分解能を得るために、加振法の検討が重要となる。本年度は一次元イメージングにより実証実験を行うため、線上の加振体を用いて加振することにより、平面波加振システムを構築することができた。当初、複数の加振体が必要と考えられたが、線上の加振体で十分背あることがわかり、2次元イメージングへの応用が期待できる。 ③『超音波による原理検証実験』 前述したように原理検証には加振波にずり弾性波、センシング波に超音波を用いた。計測対象は水槽内に配置した寒天表面であり、その表面のバイブロドップラ計測を行う。計測システムでは、新たに低ノイズの周波数安定発振器を用いた計測システムを開発し、30dBのダイナミックレンジ向上が達成できた。実験は一次元のイメージングとして、寒天表面に線状に傷をイメージングできた。また、センシング波の放射方向を傾けることにより、表面からの鏡面反射と傷の反射が明確に分離できた。また、従来法であるセンシング波のスキャンにより得られる空間分布と比べ、明かに傷が判別できることがわかった。このため、十分に当初目標を達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は映像化を行う上で最も重要な二次元イメージングアルゴリズムを開発するため、以下の三項目の要素技術に関して検討を行う。 ④『二次元逆合成開口の理論検討』 二次元イメージングアルゴリズムの確立は画像化を行う上で最も重要な要素であり、項目⑤とも関連するが、まず加振法について検討する。基本的には平面波加振装置を伝搬パスが互いに直交(x, y方向)するように配置させ、y方向に伝搬する加振波の周波数を固定し、x方向の周波数を掃引する、次に、y方向の周波数を少し変化させ、同様な計測を繰り返すことにより、二次元ドップラ周波数スペクトルが得られることになるため、その二次元逆フーリエ変換により、二次元イメージングができると考えている。また、項目①と同様に、表面波の反射波や、表面の傾き、速度不均一性の影響を考慮できるような二次元シミュレーションコードも開発する。 ⑤『二次元加振法の検討』 二次元イメージングにおいて重要なことは、平面波を直交させて伝搬させることにある。もし、計測領域内を加振波が平面波として伝搬しなければ、二次元逆フーリエ変換においてイメージが理想的なメッシュから歪むことになり、推定が困難になる。一つのアプローチは、より平面波に近い直交する加振波を生成する加振システムを開発することであるが、現実的には困難であると考えられ、平面波とみなせない場合にそのイメージを補正する信号処理法も検討課題となる。 ⑥『二次元イメージング実験』 この技術要素では、一次元の平面波加振装置を二つ用いて伝搬方向を直交するよう配置し、二次元任意方向平面波加振装置を構築する。センシング波のみのイメージング結果と、本手法で得られた二次元イメージング結果を比較しながら検討していくが、超音波計測での最適化ではなく最終的に非破壊検査の応用も考慮しながら、検討を行っていく。
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Research Products
(12 results)