2017 Fiscal Year Research-status Report
CR画像からの指骨領域の自動抽出とコンピュータ画像診断支援への応用
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16K14279
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 亨燮 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (80295005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 隆敏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40299631)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / コンピュータ画像診断支援 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年我が国では高齢化が進み,医療分野では患者の社会復帰を目的として生活の質を重視した低侵襲で高精度の治療技術が開発され,その発展は高度なコンピュータ技術により支えられている.今やコンピュータ技術は,医療を支える基盤技術であり,医療用の各種装置とコンピュータ画像診断技術の融合により,高精度な新しい装置や術式が次々と生まれ,低侵襲で高精度かつ安全性の高い医療技術の発展が期待される.これらの発展は,コンピュータ技術により大きく前進した医用画像工学分野の大きな功績であるといえる.特に,病気の早期発見,経過観察,治療効果判定および治療方針の決定に,画像診断は必要不可欠であり,撮影装置より得られた生体内情報を正確に画像化し,精度の高い診断結果を得ることが必要となる. その中で,関節リウマチの進行に関連する病態の解析には,CR画像を用いた診断が日常的に行われており,画像所見は骨構造の破壊を反映する骨びらん,関節腔の狭小化,関節周囲の骨粗鬆症および全身の骨粗鬆症を診断する最も効果的な診断法であると言える.しかし,定量的な画像診断支援法が存在せず,その改善が求められている. 本研究では,骨粗しょう症の診断支援を行うため,多くの症例に対してより汎用的な識別を可能にした,骨粗しょう症の診断を行うためのCADシステムの開発を行った.平成29年度の主な成果としては,被験者の両手を撮影したCR画像の指骨領域内に,解剖学的に骨粗しょう症の症状が顕著に表れる部分に関心領域を設定し,深層畳み込みニューラルネットワークを用いて自動で特徴を抽出し,未知データからの疾患の有無を識別するための画像解析モデルを構築した.実験では,提案手法を101症例のCR画像に適用した結果,True Positive rate75.5[%],False Positive Rate13.9[%]の認識率を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,手のCR画像から骨粗しょう症の全自動診断支援を行うためのCADシステムの開発を目的としている.提案するシステムは大きく,「対象領域の抽出」,「過去画像と現在画像の位置合わせ」,「特徴量解析」,「自動識別」のステップで構成されている.平成29年度の当初計画である,各種特徴量解析による自動識別において,従来の統計的特徴量による人工ニューラルネットワークだけでなく,深層学習による自動識別法の構築を行い,実画像データによる識別性能の比較を行った.具体的に本研究では,指骨CR画像から得られる各データセットに対し,深層学習を用いた骨粗しょう症の識別を行い,コンピュータ画像診断法による診断支援が可能であることを示した.提案手法である疑似カラー画像のデータセットによるAlexNetへの適用が可能であることが示せ,交差検証の結果がTPR : 75.5[%],FPR : 13.9[%が得られ,従来の特徴量解析に基づく人工ニューラルネットワークによる結果と比較すると,TPR,FPRともに識別の向上がみられた.これは,3種類の画像を含ませた疑似カラー画像を用いることによって情報量が増加し,CR画像において捉え難かった正常症例と異常症例の違いを表現しやすくなったと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画としての識別器に加えて,深層学習による識別器を導入したことにより,特徴量設計が容易になったが,学習データの不足によるデータ補完に課題(過学習の問題)が残っている.また,疑似カラー画像を用いたとしても,ラベル間での違いを十分に生み出せたとは言い難く,また,同一ラベル内においても,症例間で疾患の進行具合が異なる場合や,骨の部位によっては軟部組織の厚みや骨梁の見え方においてばらつきがみられる例も存在している.これらの諸問題を解決するためにはX線量の情報を用いることにより,画像間のばらつきを軽減することが可能になると考えられる. 本年度研究成果より見えてきた課題の解決に向け,さらなる画像解析の法の開発と平成30年度研究課題である「臨床実験によるシステムの性能評価」を行う予定である.具体的には,平成29年度の課題である,1)深層学習における画像データ数の不足を改善するため,データアノテーション法の検討および実験の実施,2)コンピュータ画像診断支援により得られる識別結果の表示法の構築を図り,その結果を医師に提示するためのシステムの構築を目指す. 以上の推進方策を踏まえた画像解析法を構築し,臨床実験を行うためのソフトウェアの開発に繋げ,実用化のためのコンピュータ画像診断支援法を開発する.
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Causes of Carryover |
研究分担者の青木准教授の出張計画に変更が生じたことと物品の納入が間に合わなかったため、次年度使用する予定である。
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Research Products
(9 results)