2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14294
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鶴田 浩章 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90253484)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不凍多糖 / 凍結融解 / 小片凍結融解試験 / 耐凍害性 / スケーリング / 糖濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度においては、まず、不凍多糖がどの程度の量でコンクリートの耐凍害効果を発揮するかを見極めることを試みたが、なかなか効果を発揮する使用量にたどり着くのに時間を要した。新設構造物を対象にした検討において、凍結融解試験(JIS A 1148 A法)を実施し、糖濃度6、59μg/mlの2条件(不凍多糖A液)とプレーンコンクリートで比較を行った結果、59μg/mlの条件において、優れた内部劣化抵抗性を確認できた。しかし、試験に時間がかかることや試験装置の空き状況により検討の効率性向上のため、スケーリング劣化に対する試験方法として実績がある小片凍結融解試験法を試みることとした。この方法は、現在、寒冷地域で顕在化しているスケーリング劣化の評価に適する試験法との評価を受けているものである。2種類の不凍多糖液を使用して、ひとつの不凍多糖液(A液)に対して、糖濃度11~501μg/mlの7条件で試験を行い、もう一方の不凍多糖液(B液)に対して糖濃度11~60μg/mlの3条件で行った。その結果、A液については11~99μg/mlの条件で十分なスケーリング抵抗性を確認できたが、B液については効果が確認できなかった。 以上の検討から糖濃度59μg/ml程度で凍害に対する内部組織の弛緩に相当する内部劣化抵抗性やスケーリングに対する抵抗性を十分満足することが確認できた。 また、その他に物性試験や凝結試験、強度試験を行ったが、特に問題はなかった。しかし、膨張試験、成分や組織等の分析、既設対象の検討は実施できなかった。さらに、凍結防止剤としての効果の検討に対しては融氷性能が劣っていることが分かったため、不凍多糖だけでは凍結防止剤としての機能を果たさないことが予想され、それ以降の試験は行わなかった。 以上より、本研究課題については不凍多糖を使用することで耐凍害性改善が可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
凍結融解試験に対する準備や試験に多くの時間がかかることや試験装置の空き状況から、数多くの実験水準に対する試験ができなかったため、多くの実験水準に対する試験が行える小片凍結融解試験を行うこととした。そのために、変更のための検討や試験準備に時間を要した。さらに、多くの水準での実験をおこなったことから、時間を要してしまった。また、凍結防止剤としての効果の検討については、不凍多糖の融氷性能が十分でなかったために、良い試験結果が出るとは考えられず、対応策を検討するのに時間を要した。以上のことから、予想よりも大幅に時間を要したことから、やや遅れた進捗状況となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果より、コンクリートの耐凍害効果を示す糖濃度がおよそ明確になったので、それを踏まえて追加検討や活性度のより高いB液を使用した試験を行う予定である。また、凍結防止剤としての効果についても、過冷却促進物質と併用する形で検討を行うことに変更して、当初の計画と同様の比較試験を行うことを考えている。上記の検討をできるだけ順調に進めて、既設構造物に対する対応に対しても取り組んでいきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
予想よりも凍結融解試験に時間を要したことに加え、数多くの小片凍結融解試験を行い、効果を発揮する不凍多糖の添加量を見出すことに時間を要したため、計画していたいくつかの検討が実施できずに、試験や分析に対する経費支出ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、28年度の成果をもとに、実施できなかった試験も実施して成果を得ることができると考えられるので、それらに研究費を充当する。本テーマの検討に関わる学生も昨年度より増やして2名体制で行うことにしており、当初計画の課題を追及していく予定である。
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