2017 Fiscal Year Research-status Report
打込み面から得られる情報に基づくコンクリートの締固め判定評価手法の確立と実装
Project/Area Number |
16K14295
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
村上 祐貴 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (70509166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外山 茂浩 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (60342507)
上村 健二 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (80708090)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 締固め / 打込み面の輝度 / 技能 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリートの打込み時における締固め作業は、水密性、耐久性、美観等のコンクリート構造物の品質に大きく影響する。土木学会コンクリート標準示方書において、締固め完了の目安は「コンクリートとせき板との接触面にセメントペーストの線が現れること」や「コンクリートの容積が減っていくのが認められなくなり、表面に光沢が現れてコンクリート全体が均一に溶け合ったように見える」といった定性的な記述にとどまっている。上述したようにコンクリートの締固めは、コンクリート構造物の品質を左右するため、客観的かつ定量的な締固め判断手法の確立が、今後のコンクリート構造物の品質向上に必要不可欠である。 平成29年度では、打込み面のコンクリートの輝度から、コンクリートの締固め程度を定量的に評価することを目的として、平成28年度では未検討であったバイブレータの挿入深さや締固め回数等を実験パラメータとして、締固め過程の打込み面の輝度の変化をXYZカメラで測定した。また、締固め程度の評価指標として、平成28年度は圧縮強度を採用したが、圧縮強度は締固め程度に対して冗長性を有し、締固め程度を評価する指標として適切ではなかったことから、平成29年度では吸水率を締固め程度の評価指標とした。平成29年度の研究では以下の知見を得た。 1)締固め経過時間が長いほど、バイブレータからの距離が近いほど、バイブレータの挿入深さが深い程、締固め終了時の打込み面における輝度は大きくなる。 2)締固め直後と締固め終了から10分後の打ち込み面における輝度の変化は小さい。 3)吸水率と輝度との間には一義的な線形関係が認められ、吸水率が小さい程、締固め終了時における打ち込み面の輝度は大きくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、吸水率を指標として締固め過程の打込み面の輝度の変化から締固め程度の評価を行った。まず、コンクリートの吸水率は設定した実験パラメータによって変化しており、締固め程度を評価する指標として適切であることが確認された。各実験パラメータでの硬化コンクリートの吸水率と打ち込み面の輝度には一義的な線形関係(自由度調整済み決定係数:0.75)が認められ、吸水率が小さい程、すなわち締固めが進む程、正規化した輝度が大きくなった。これにより、打ち込み面の輝度に基づいて締固め程度を定量的に評価することが示唆された。 次に、当初の計画ではウェアラブル端末を用いて、打ち込み面の輝度情報を作業者にリアルタイムで伝送することを予定していたが、過度な締固めによる材料分離は打ち込み面表層に限られることや、輝度の変化が締固め終了後10分間で小さいことから、打ち込み面の輝度をリアルタイムで作業者に伝達する必要がないことが示唆された。また、本実験の範囲内では打込み面の輝度のみで、締固め程度を評価することが可能であったたため、多次元データを関連付ける自己組織化マップの適用は未実施であるが、上述のように研究目的である、打ち込み面から得られる情報に基づくコンクリートの締固め判定評価手法の確立は概ね達成していることに加え、上記知見をまとめ、1編の査読付き学術論文を投稿し、掲載が確定していることから、研究の達成度は概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度までの研究成果を踏まえ、以下の2つの課題について取り組む 【課題1】大型試験体を対象とした打ち込み面の輝度、表面粗さ情報に基づく締固め判定法の検証 【課題2】打込み面の表面粗さ情報の取得手法の確立およびデジタルカメラによる締固め程度の評価に資する輝度の取得手法の検討 平成29年度の研究によって、締固め終了直後の打ち込み面の輝度は、その後10分間は変化の小さいことが確認されたため、作業者にリアルタイムで輝度を伝送する計画は変更し、締固め終了後の打ち込み面における輝度で締固め程度を評価することとする。 平成29年度までに小型試験体での検証は、ある程度目途が立ったことから、比較的大型の試験体を作成し、本手法の適用性について検証を行う。当初の計画では壁状部材を計画していたが、計測領域が小さいため、床部材を対象として検討を進める。 次に、現状の輝度計測には、輝度に加えて色情報を計測可能なxyzカメラを使用しているが、コンクリートは無彩色であり、締固め過程で打込み面の色の変化は、ほとんど生じないことが確認された。輝度のみであれば安価なデジタルカメラでも測定可能であり、社会実装する上では計測コストも重要な要素になるため、デジタルカメラによる測定の可能性について検証する。また、打込み面の輝度の測定に加えて表面粗さ(スペクトル)を取得し、SOMに適用することで、締固め程度評価の精度向上を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度の予算全額を年度内に使用する予定であったが、購入予定の材料が年度内に納品が困難であったことから、5131円の残額が生じた。この次年度使用額は当初購入を予定していた材料購入費用に充てる。
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