2016 Fiscal Year Research-status Report
道路橋に起因する環境振動の評価への客観的ストレス評価法適用に関する基礎的研究
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16K14296
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
松本 泰尚 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90322023)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境振動 / 振動評価 / ストレス評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市内をはじめ道路橋の周辺に住居等が立地する環境における,走行車両により励起される橋梁振動に起因する環境振動問題は,居住者や利用者が受ける不快感やアノイアンスなどの主観的な判断により顕在化する.したがって,環境振動に関する評価指標は,心理学的測定法により測定し得るこれらの主観的判断を用いることが自然である.一方,橋梁の設計や対策に影響を与える評価指標は,可能な限り客観的なものであることが望ましい.そこで,本研究では,近年医学分野などで検討が進んでいる生理反応を用いた心的ストレス評価法の環境振動評価への適用性を検討し,環境振動に対する主観的な判断に客観的な裏付けを与える方法の構築に資する基礎的知見を得ることを目的としている. 本年度は,本研究の第一段階として,振動が及ぼす人への影響の評価に対する,脳波を用いた客観的ストレス評価法の適用性について基礎的な検討を行った.具体的には,正弦振動を入力振動とする加振機を用いた被験者実験を実施して,実際の居住空間における環境振動を想定して設定した振幅,継続時間をパラメータとした検討を行った.脳波を用いたストレス評価については,近年開発が進んでいる簡易型脳波計を複数用いた予備的な検討の結果,快適性評価の重要な指標となるアルファ波が優位に出現する後頭部に電極を設置する方式のポータブル脳波計を利用して研究を進めることとした. 被験者実験では,振動を受けることによって,脳波によるストレス評価値に変化が出る被験者と,変化が出ない被験者がおり,この差異が,振動に対する心理的な反応の個人差に関連している可能性が示唆される結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において,本年度は,振動暴露に対する客観的ストレス評価に関して,正弦振動を入力振動とする被験者実験による基礎的検討を実施することを計画しており,その計画は達成できた.一方,振動による影響をリアルタイムで評価できる可能性を持つ脳波を用いたストレス評価の検討に注力したため,補助的な評価法として想定していた唾液を用いたストレス評価については検討を行わなかった.以上を踏まえ,「おおむね順調に進展している」の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの正弦振動を用いた基礎的な検討を踏まえ,客観的ストレス評価法の環境振動評価への適用性を検討する.研究方法の概要はこれまでと同様であるが,加振機を用いた被験者実験で用いる入力振動については,道路橋に起因する環境振動で想定される条件の範囲内で,振動数,振幅とその時間変動,継続時間を設定する.振動数については,道路橋および建物の振動モードで特に環境振動問題の要因となりやすい低次モードの固有振動数を想定して設定する.振幅については,複数のレベルを設定するが,正弦振動を用いた基礎的検討の結果を踏まえ,脳波によるストレス評価法で弁別が可能な振幅レベルの変化ステップを決定する.また,振幅の時間変動および振動の継続時間について,様々な車両の走行状況を想定して設定する. 以上の検討により,環境振動評価に対する客観的ストレス評価の適用性に関する基礎的な知見が得られると考えているが,その一方で,実際の適用にあたっての課題も抽出できるはずである.その後の更なる研究開発につながるよう,これらの課題と,得られた基礎的知見を合わせて整理することで,本研究のまとめとする.
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り予算執行をしたが,少額の残余が出ることとなっため,次年度使用額とすることとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,次年度予算に比して非常に少額なため,使用計画に大きな変更はない.
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