2016 Fiscal Year Research-status Report
地盤材料のせん断破壊現象を対象とした高精度AE測定による微視的メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K14301
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古関 潤一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30272511)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 地盤工学 / 土質力学 / 室内土質試験 / AE測定 / 微視的メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
粒状体である地盤材料では、微視的な「粒子間でのすべり」と「粒子自体の破砕」、および「粒子間結合部が固結力を有する場合にはその消失」により、巨視的なせん断破壊が生じると考えられているが、これらの相互関係は十分には解明されていない。そこで、固結力の有無が異なる2種類の地盤材料に対する室内せん断試験において、「近年になって格段に高精度化されたAE測定技術」を用いた非破壊計測を適用することにより、以下の点を明らかにすることを目的とした検討を実施した。 a. 「粒子間すべり」と「粒子破砕」が、せん断試験中のどのタイミングにどの位置で生じるのか? b. これらの発生状況は、固結力のない地盤材料のせん断層形成過程とどのように関係するのか? c. 固結力を有する地盤材料に対してAE測定を実施することで、「固結力消失」も判別できるか? 初年度である本年度は、AE測定を併用した未固結地盤材料の室内せん断試験を実施した。 未固結な地盤材料として硅砂を用いて円柱形の密な供試体を作成し、その側面8箇所に高感度AEセンサーを設置して圧密排水三軸圧縮試験を行った。試験では、水平可動ペデスタルを装着した装置を用いて、せん断層が形成され横ずれが始まっても載荷軸に過大な曲げモーメントが作用しないようにした。試験中に計測したAE波形を分析し、その発生頻度と試験で得られた応力~ひずみ関係の相関性を明らかにした。さらに、AE波源の発生位置を算定し、その分布がせん断中にどのように変化するかについて検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AE測定を併用した未固結地盤材料の室内せん断試験では、AE 波源の発生位置の分布状況として、当初予期していた状況とは異なる結果が得られた。そのため、本年度後半は当初の研究計画を見直して、AE波源の発生位置の推定手法の高精度化に関する検討を、基礎的な試験も含めて集中的に実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、AE波源の発生位置の推定手法の高精度化に関する検討を継続して行うとともに、当初予定していた以下の研究も実施する。 1) AE測定を併用した未固結地盤材料の室内せん断試験:せん断時の拘束圧や供試体密度を変えた系統的な試験を実施する。さらに、単調載荷だけでなく、せん断の途中で繰返し載荷履歴を与える試験も実施して、これらの条件の違いが微視的現象の発生状況に及ぼす影響を明らかにする。 2) AE測定を併用した固結地盤材料の室内せん断試験:まず、セメントや石膏を添加して土粒子間で固結力が発揮されるようにした状態で、固結部分を強制的に破壊させる予備試験を行い、その際のAE波形を測定する。この周波数特性を「粒子間すべり」と「粒子破砕」の発生時と比較することで、微視的な「固結力消失」もAE測定で判別できるか否かを明らかにする。次に、このような固結地盤材料で作成した供試体に対して、1)と同様にAE測定を併用したせん断試験を実施する。AE波形の分析結果に基づいて、固結地盤材料の巨視的なせん断破壊過程における微視的現象の発生位置とその頻度の変化状況を明らかにする。 3) 画像解析結果との比較分析:試験中に記録した供試体側面の変形状況の画像解析を行う。これらの結果を総合的に分析し、微視的現象の発生状況と巨視的なせん断破壊挙動との相互関係が、地盤材料の固結力の有無や密度,拘束圧等の条件の違いに応じてどのように変化するかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初は直方体と円柱形の供試体の間で試験結果を比較することで、より高精度なAE測定ができる供試体形状とAEセンサーの配置・設置方法を明らかにする予定であったが、この検討に着手することができなかった。そのため、直方体で試験を行うための各種消耗品の購入費用として予定していた71,772円が、次年度使用額となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予算使用計画に追加して、次年度使用額71,772円を直方体供試体用のメンブレン等の消耗品購入費用として使用する。
|
Research Products
(2 results)