2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井料 美帆 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80469858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井料 隆雅 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10362758)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 交通工学・国土計画 / 歩行者 / パーソナルモビリティ / 自動運転 / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らがこれまでに実施した,セグウェイ等のパーソナルモビリティ(PMV)と歩行者・自転車との回避実験の結果等を用いて,PMVの挙動モデルに必要なパラメータの基礎分析を行った.追従時の反応時間が急停止時と通常の追従時とで異なることや,歩行者・自転車それぞれに対する車間距離などの情報を得た.その後,既存の歩行者シミュレーションモデルのパラメータをチューニングすることでPMVの挙動モデルを作成した.追従,追い越し,対向者との回避等の基本挙動について,歩行者モデルのチューニングによる簡便なモデルでも再現が可能であることを示した.しかし,より歩行者交通量の多い環境下では観測値に比べてモデルでは急制動を行う傾向もあるため,PMVの機械的な挙動の制約条件を与えたモデルの改良が望まれる. 導出したモデルを用いて,歩行者が対向方向から向かってくる場合のセグウェイの回避行動の感度分析を行った.既存の被験者実験とシミュレーションとで,接近速度と回避距離との相関関係の傾向が類似していることを確認したうえで,被験者実験では安全上実施が困難な条件においてもシミュレータによる解析を行った. バーチャルリアリティ(VR)空間実験については,歩行者を対象としたVR空間での挙動実験の既往事例が極めて限られることから,まず手法のfeasibility studyを行うこととした.具体的には,歩行者が接近するPMVとの認知距離や不快感の感じ方について,現実空間の実験とヘッドマウントディスプレイを用いたVR空間内での実験とを比較することにより,VR空間と現実空間との認知特性の違いを調べるものである.今年度はこの実験の実施のほか,VRソフトウェアの使用方法の習熟,被験者の歩行時の位置や進行方向の情報をVR上に反映するためのセンサの検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で予定していたPMVの挙動モデル構築・交通流評価については,VR空間にも反映可能なPMV挙動の基礎モデルを構築し,それを用いてPMVの交通流への影響の机上検討を行っており,予定通りの進捗といえる. VR空間の改良については,歩行者VR実験についての既往研究を整理した結果として,VRと実空間との乖離を十分に精査する必要があることが見込まれたため,認知機能の評価に特化した予備実験を行った.VR実験では,挙動モデルをVRシステムに組み込むのみならず,被験者がVR上の移動体とインタラクティブに反応するために,被験者の位置情報をVR空間上に反映するためのセンサの検討が特に重要である.必要なモーションセンサを導入し,その特性やVRとの接続方法について検討を進めているところであり,次年度の本実験に向けた準備は十分に進められているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成したPMV挙動モデルと,被験者の挙動をVRに反映させるためのモーションセンサを統合して,歩行者としての被験者と周辺PMV,歩行者とがインタラクティブに反応するVRシステムを構築する.これを用いて,周辺PMV車両の挙動パラメータやアルゴリズムを変化させたときの歩行者の反応を計測する. 被験者の反応を歩行者の交通シミュレーションモデルに反映させることで,様々な挙動を持つPMVに対する人間の行動を考慮したPMV・歩行者混在交通シミュレーションを作成することができる.この交通シミュレーションによる感度分析を通じて,PMVの挙動が歩行者交通流の円滑・安全性に及ぼす影響を評価し,望ましいPMVの挙動アルゴリズムを提案する. なお,PMV挙動モデルについては,PMVの機械的な挙動の制約条件を与えてモデルを改良することが課題として挙げられる.本課題が研究全体に与えるインパクトを精査したうえで,必要に応じて上述の研究計画と並行して改良を加える.
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Causes of Carryover |
パーソナルモビリティの挙動モデル構築に必要なデータの解析にかかる人件費を計上していたが,データの一部を日本大学から貸与することができた結果,データ取得・分析に要する人件費が当初予定よりも少なくなった. また,パーソナルモビリティの形状モデルをVR空間上に組み込む作業を外注することで,当初想定よりも少ない費用でのモデル構築が可能となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にシステム改良作業に従事して内容を熟知している大学院学生に,継続して協力してもらう予定であるが,研究代表者の異動に伴い当該学生との研究打合せのための旅費が追加的に必要となった.そこで,次年度使用額は上記の旅費に充当することを予定している. 他は当初予定通り,研究分担者との研究打合せおよび成果発表旅費,VRシステム構築のためのプログラミングや実験実施補助,被験者謝金にかかる人件費を主たる経費とし,併せて実験にかかる消耗品購入や英文校閲費用として使用する計画である.
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Research Products
(3 results)