2016 Fiscal Year Research-status Report
リスク存在下での交通行動を観測するための仮想環境実験手法の構築と評価
Project/Area Number |
16K14319
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井料 隆雅 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10362758)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 伸一 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10224940)
下村 研一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90252527)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | バーチャルリアリティ / 交通行動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,交通事故等のリスク存在下で人の行動を仮想環境内で観測する際に,本来の危険感が再現できない問題の解決を目標とし,危険感を代替する負のインセンティブの再現手法と身体的現実感のあるVR装置の構築を目的としている.今年度は,当初計画通り(1) 仮想環境で「負のインセンティブ」を与える手法の構築,(2) (1)の評価のための実験の実施,(3) ウォークスルー型VR装置と簡易型VR装置を用いた実験装置の構築の着手,を実施し以下の成果を得た: (1) 仮想環境において負のインセンティブを与える手法を構築した.手段としては金銭を用いるが,その効果を増強するために,インセンティブを確率的に設定する,別の実験参加者に与える,という方法を用いた.そのほか,危険(事故等)の映像を事前に見せる方法も用いた. (2) (1)の評価のための実験を実施した.実験協力者を集め,車道を横断する際に車にひかれるかもしれない状況を想定し,アンケート調査による実験を行った.結果,インセンティブ自体は危険感の代替手段として有効であることは確認できたが,そのほかの提案手法の効果を有意に認めることはできなかった. (3) ウォークスルー型VR 装置と簡易型VR装置を用いた実験装置の構築に着手した.簡易型VR装置(ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による)は構築を終了し,(2)の実験と同様の設定での実験の実施まで行った.ウォークスルー型については仮構築と没入感に関するアンケート調査を行った.その結果,予想に反し,ウォークスルー型の没入感が簡易型に比べてむしろ低いという結果を得ている.この点は平成29年度に精査し,場合によってはHMD型で代替することも検討する予定である. ※ 各実験は神戸大学工学研究科の研究倫理審査委員会の承認のもとに実施し,金銭インセンティブ付与の際には本学会計規則に沿った会計処理を行っている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施することを計画していた,(1) 仮想環境において「負のインセンティブ」を実験参加者に与える手法の構築,(2) (1)の手法の評価のための実験の実施,(3) ウォークスルー型VR装置と簡易型VR 装置を用いた実験装置の構築(一部は平成29年度へ継続),については,すべて計画通りに実施することができた.ただし,実験結果については計画時に想定していたものとはなっていない.本研究で目的とする「危険感を代替する負のインセンティブの再現手法と身体的現実感のあるVR装置の構築」のためには,特に,インセンティブ付与の方法にどのような工夫をすればよいかについて平成29年度に再検討をしなくてはならないと考えている.また,当初はより没入感があると考えていたウォークスルー型のバーチャルリアリティ装置の没入感が,当初は簡易型と呼んでいたヘッドマウントディスプレイ型の装置に比べて没入感が弱いという問題も発生している.これは,ヘッドマウントディスプレイによるバーチャルリアリティ装置の技術革新が当初想定よりもはるかに著しく,その没入感や現実感がここ1年程度で飛躍的に向上したことが理由としてある.VR装置構築を平成29年度に継続するにあたっては,必ずしもウォークスルー型にこだわることなく,よりリスク存在下での交通行動の再現性が高い手法を用いて装置を構築することが望ましいと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究の最終年度であり,平成28年度の成果を用いて「リスク下の交通行動実験システム」を構築することを実施する予定である.研究推進の大枠の方向性は計画から変わることはないが,平成28年度に実施した研究の成果で得た知見の中には当初想定と異なるものもあるので,それを反映して研究を継続する予定である.具体的には以下の2点:
(1)インセンティブ付与方法について:平成28年度の成果が示唆することは,金額の大小が持つ効果にくらべて,ほかの手段の効果はあまり大きくないということであった.このことを鑑みて,実務的な制約(一般的に許容される謝金の範囲より大きい幅をつけることができない)の中で,金額の変動をいかに大きくできるかを検討する予定である.
(2)バーチャルリアリティ装置の構築について:ウォークスルー型のバーチャルリアリティ装置の没入感が,当初は簡易型と呼んでいたヘッドマウントディスプレイ型の装置に比べて没入感が弱いという問題があった.ただし,それであっても,ウォークスルー型の装置には自分の手足が見えるなどのメリットも存在する.ウォークスルー型の装置の改良か,ヘッドマウントディスプレイ型へ完全に移行するかについて慎重に検討し,それに基づいて装置の構築を継続する予定である.
|
Research Products
(1 results)