2016 Fiscal Year Research-status Report
高グラニュラリティ・データセットに基づいた都市構造のモニタリング
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16K14324
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
熊谷 樹一郎 摂南大学, 理工学部, 教授 (00319790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空き家率 / 現地調査手順 / 水道栓 / 階層ベイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ユーティリティデータの収集,現地調査方法の検討と現時調査,ユーティリティデータなどの特性分析,ベイズ統計を応用したモデル化を実施してきた. ユーティリティデータの収集については,寝屋川市から水道栓データの提供を受けた.さらに,他のユーティリティ企業からのデータ提供が望めなかったため,同市の固定資産台帳のデータを活用し,建物単位での築年数のデータを新たに整備した. 現地調査の結果は推定法の推定精度を左右するが,空き家の定義そのものがあいまいな面があり,調査の標準的な手順も示されていなかった.そこで,予備調査から調査時に着眼すべき内容を抽出・整理し,調査項目の標準化を試みた.さらに,閉栓水道栓が属する建物を「参照建物」と定義し,調査ルートを決定する際の起点・通過点・終点のキーとしてこれらを採用した上で,調査項目ごとに調査結果を記録する方法を取りまとめた. 現地調査結果との比較からは,築年数9年未満の空き家率は0%であり,築年数が増加するとともに空き家率が高くなる傾向が明らかとなった. 推定モデルとして,階層ベイズに基づいたモデルを構築した.本年度は,事後確率を空き家率とした上で,地域差を考慮した一般線形混合モデルまで構築している.推定精度の検証として,1)基本ケースを基に,2)建物タイプ差を考慮するケース,3)建物タイプ差および地域差を考慮するタイプの3ケースを設定し,現地調査結果との一致率を比較・検証した.1)から2),3)へと条件が変化するに連れて現地調査結果との一致率が10%~20%向上することが確認できた.空き家の発生を説明づける上で,建物のタイプ(戸建て,長屋など)を考慮していく必要性が示唆された.加えて,用途地域などの地域の特性によって空き家の発生状態が異なることも統計的に明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他のユーティリティ企業からは,個人情報保護の観点からデータ提供が望めなかった点がやや進捗に影響を及ぼした.その一方で,固定資産台帳から整備した建物の築年数データと現地調査結果との比較からは,築年数データが空き家の広域推定に対して有効であることが示唆された.また,予備調査から得られた調査項目を採用し,閉栓した水道栓を有する建物をキーとした現地調査方法を提示したことによって,行政の保有するユーティリティデータを活用した実用的,かつ,標準的な手順を示したことになる.さらに,ベイズ統計の応用に関しても,階層ベイズモデルの適用まで実施でき,かつ,現地調査との一致率を向上させる傾向を把握できたことは次の年度につながる成果といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
推定モデルの構築の方向性は妥当であることが確認できた.次年度は,推定モデルの改善を試みるとともに,地方自治体で求められる調査・分析の要件を照合した上で,本モデルを適用した広域推定方法の確立を目指すことを考えている.具体的には,固定資産台帳のデータから導入可能な建物の使用用途,建物の材質などを築年数とともに採用し,モデル上での適用効果を検証する.また,本研究の一部は,国土地理院近畿地方測量部が設立した「地理空間情報活用推進に関する近畿地区産学官連携協議会」のパイロット事業に採択されており,対象範囲を北河内レベルへと拡大していくことを想定している.
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Research Products
(1 results)