2016 Fiscal Year Research-status Report
表面増強ラマン散乱の生体内分子への適用法の開発とそれを用いた微生物代謝機能解明
Project/Area Number |
16K14327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保田 健吾 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80455807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラマン散乱 / 微生物機能解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロセス内の生物学的反応を理解するためには、その反応を担っている微生物群の機能を解明することが不可欠である。そこで本研究では、安定同位体基質で標識された基質をトレーサーとして用い、微生物代謝に基づいた微生物機能解明に着目した。MAR-FISH法やNanoSIMSを用いる方法などが報告されているが、放射性同位体を用いることや非常に高価で機器へのアクセシビリティが低いなどからラボでルーチンとして用いられるには至っていない。そこで本研究では安定同位体が取り込まれた物質のラマン散乱光のピークがシフトすることに着目した。ラマン顕微などの装置は比較的安価であり、安定同位体を用いることから上述した技術の問題点を克服できる可能性がある。しかしながらラマン散乱光は非常に微弱であり、また微生物同定の煩わしさから余り用いられていない。そこで本研究では表面増強ラマンに着目し、ラマン散乱光を増強させる技術を開発することとした。H28年度は表面増強ラマンを生じさせるための核となるNanogold (1.4 nm) とUndecagold (0.8 nm) を菌体内に侵入・定着させ、それを金増感反応により表面増強ラマンが生じるサイズまで巨大化させる方法について検討を行った。まず金基板上に細胞を固定し、そこにNanogoldあるいはUndecagoldを添加後、金増感反応を行う反応系について様々な検討を行ったが、金ナノ粒子の基板への吸着や金増感によるバックグラウンドシグナルの増加などが見られた。そこで反応場を溶液中に変更し、金ナノ粒子の侵入・定着をTEM観察も行いながら検討した。その結果、細胞ごとにばらつきはあるものの、金ナノ粒子を細胞内に侵入・定着させるためのプロトコルのベースを作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基板上で行う反応系から溶液中で行う反応系への変更はあったものの、金ナノ粒子を細胞内に侵入・定着させるためのプロトコルのベースを作成することができ、研究開発において重要なポイントを押さえることが出来、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
溶液中で金ナノ粒子を細胞内に侵入・定着させた細胞に対し、金増感反応を行い、表面増強ラマンが生じるサイズまで金ナノ粒子を巨大化させる方法を確立する。またTEMおよびラマン顕微観察を行いながら、その効果を検証する。表面増強ラマン効果を用いた高感度ラマン散乱光検出技術の開発する。微生物同定にはアルキン標識した遺伝子プローブを用い、アルキンシグナルについても表面増強ラマンによりシグナルを増幅する。微生物機能解明へ展開としてSERS-AISH法を開発、適用する。
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Causes of Carryover |
基板上で研究を行う予定であったため、金基板など基板上での実験のための物品の購入を想定していたが、バックグラウンドシグナルの増加などの問題から溶液中で反応を行うこととなり、その基礎的な検討に時間を要したため、物品購入費が少なくなった。それに伴い、研究連携者との打ち合わせのための出張が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
溶液中での金増感反応には、基板上で行うよりも多くの試薬を必要とする (例えば基板上では1サンプル辺り10-20μl程度だが、溶液中では100-200μlとおよそ10倍の量が必要) ため、今後の研究開発においては物品購入費が当初予定よりも増える。また、TEM観察を取り入れたため、分析装置の使用料などが増加するため、それらに用いる予定である。
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