2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14330
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
玉井 昌宏 大阪産業大学, 工学部, 教授 (70197557)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 剛三 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (10155377)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 大気環境 / 火山ガス / 阿蘇山 / 気象観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,平成26年の活動の活発化以降,火山ガスの増加が観測されている阿蘇山を対象として,熊本平野における二酸化硫黄の濃度変動特性と気象状況との関連性を,各種のデータ分析と現地観測,数値計算により検討している. 平成29年度は,初年度に引き続き,①熊本平野における二酸化硫黄の濃度変動特性と気象状況との関連性についてデータ分析により検討した.また,②阿蘇山外輪山西側斜面において接地層気流場の観測と地表付近の濃度観測を実施した.これらに加えて,本年度より,③火山ガス輸送メカニズムを明確化することを目標として,大気流動場とSO2輸送に関する数値計算を実施した. ①データ分析については,阿蘇山の火山活動が活発化した2013年秋からSO2濃度データが入手可能であった2015年3月までを分析対象期間とした.その結果,東寄りの地衡風風速が5~20m/s程度の晴天日,これより地衡風が強い場合には日射量の少ない日に高濃度事象が発生することがわかった.加えて,夜間の山風によっても高濃度事象が発生することが明らかとなった. ②二酸化硫黄の高濃度事象が想定される気象条件の日を選定し,阿蘇山外輪山西側斜面の接地層の気流観測を実施した.山谷風など局所風を観測することはできたが,SO2が高濃度にならず,高濃度発生メカニズムについては検討できなかった. ③現地観測のみでは高濃度事象の発生メカニズムの解明が困難であると判断し,大気流動モデル等による数値計算を実施した.その結果,外輪山地形と昼間に生じる斜面風により山越え気流に乱れが生じ,それが熊本平野の二酸化硫黄の濃度変動に強く影響しているとが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中心的な課題は,阿蘇山外輪山西側の熊本平野内において局地風の現地観測を行って,SO2輸送メカニズムを明らかにすることである.その観測の前提となるデータ分析については,平成29年度までに完了した.ところが,平成28年4月に熊本地震が発生するとともに,同年10月には阿蘇山中岳において爆発的噴火が発生した.さらに,平成29年7月には九州北部豪雨災害が発生し,調査の安全に懸念があったことから,長期間にわたって観測を見合わせることになった.これによって,現地観測の予定が大幅に遅れることになった. また,現地観測のみによりSO2高濃度発生メカニズムを明らかにする予定であったが,高濃度発生日に現地観測を実施することが困難であったことも遅れの原因となっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年の熊本地震や阿蘇山の爆発的噴火の発生等により遅れている現地観測については,本年夏季に集中的に観測を実施する予定である. 加えて,現地観測のみによる現象解明が困難であるとの判断から,平成29年度より開始しているSO2輸送メカニズムに関する数値計算を継続して実施する.
|
Causes of Carryover |
(理由) 本研究では,平成28年4月に熊本地震とその後の活発な余震活動,10月の阿蘇山中岳で爆発的噴火,平成29年度の九州北部豪雨等の発生により,長期にわたり現地観測の安全を確保することが難しい状況が継続した.この現地観測の実施に大きな遅れがたことが,次年度使用額が大きくなった最大の要因である. (使用計画) 現地観測を早急に実施する.
|