2016 Fiscal Year Research-status Report
ニホンミツバチの忌避行動および反射行動を利用した環境大気の有害性評価
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16K14331
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
樋口 隆哉 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (40300628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンミツバチ / 忌避行動 / 環境大気 / 有害性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニホンミツバチの行動観察を通して環境大気の有害性を評価する手法の開発を目指している。大気中には様々な微量有害物質が存在しているが、その有害性を簡便かつ分かりやすく評価する方法は存在しない。そこで、高い学習能力と鋭敏な化学感覚をもつニホンミツバチを利用し、環境大気に曝露させたときの行動(忌避行動や反射行動)を観察することによって、組成が複雑で低濃度である環境大気の有害性を簡便かつ理解しやすい方法で評価することを目指している。平成28年度は、実験装置の作製および装置性能を検証するためのミツバチ上昇観察実験を行った。実験装置として、2つの円柱型ポリプロピレン製容器(直径12.5cm、高さ12.5cm)の底を合わせて、それぞれの容器の底に通り道となる穴を開けたものを作製した。穴の直径は上部2.5cm、下部3.5cmとし、間に直径2.5cmの穴を開けたガラス繊維製ろ紙を設置することで、下部にのみろ紙が0.5cm幅で露出するようにした。これは、上下の容器ともに直径3.5cmの穴を開けた場合にミツバチが容易に上昇してしまい、行動の変化が表れにくくなるためである。また、下部の容器の上側に黒色のテープを2~3周巻き、ミツバチの上昇行動を誘導した。ミツバチ上昇観察実験では、ミツバチが装置内において上部へと移動することを確認したうえで、移動経路の途中に設置したろ紙によって有害物質の曝露条件を変化させることで、上昇回避行動が起こるかどうかを観察することとした。装置性能を検証するための実験を行った結果、装置内の通り道の大きさを直径2.5cmとし、上昇行動を誘導するために黒色のテープを下部の容器の上側に巻き、装置内に設置するろ紙を下側にのみ露出することで、ミツバチ上昇観察実験が問題なく行えることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年の春季にニホンミツバチの分峰群を確保して飼育を開始した。この分峰群は近くの飼育者に分けていただいたものであるが、この年は地域全体で分峰が少なく、かつ群の規模も小さかった。飼育を開始した群も通常のものより規模が小さく、その影響もあってか短期間で逃去してしまい、その後新しい分峰群を確保することはできなかった。そこで、近くの飼育者に協力していただき、飼育場所に出向いて実験を行った。このような理由によって、全体としては進行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まず新たな分峰群を確保することで安定的な実験環境の確立を目指す。その上で、平成28年度に検証したミツバチ上昇観察実験を適用して、ガス状汚染物質(特性の異なる数種類)に対する行動観察を行う。また、最終的に目指す環境大気の有害性評価においては濃度が低い環境大気の濃縮が必要になることから、吸着剤を充填した吸着管による捕集と加熱装置による熱脱着を組み合わせることで、実験装置に濃縮環境大気を導入する手法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度当初に確保したニホンミツバチの分峰群が短期間で逃去したために進行に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな分峰群の確保に要する器材、ガス状汚染物質に対する行動観察実験において使用する器材の準備に平成29年度分助成金と合わせて用いる予定である。
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