2017 Fiscal Year Research-status Report
ニホンミツバチの忌避行動および反射行動を利用した環境大気の有害性評価
Project/Area Number |
16K14331
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
樋口 隆哉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40300628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンミツバチ / 忌避行動 / 環境大気 / 有害性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニホンミツバチの行動観察を通して環境大気の有害性を評価する手法の開発を目指している。大気中には様々な微量有害物質が存在しているが、その有害性を簡便かつ分かりやすく評価する方法は存在しない。そこで、高い学習能力と鋭敏な化学感覚をもつニホンミツバチを利用し、環境大気に曝露させたときの行動(忌避行動など)を観察することによって、組成が複雑で低濃度である環境大気の有害性を簡便かつ理解しやすい方法で評価することを目指している。平成28年度は、実験装置の作製および装置性能を検証するためのミツバチ上昇観察実験を行った。それを踏まえて平成29年度は、有害物質としてアンモニアを取り上げ、ミツバチ上昇観察実験を行った。ミツバチ上昇観察実験では、ミツバチが装置内において上部へと移動する特性があることを利用し、移動経路の途中に設置したろ紙によって有害物質の曝露条件を変化させることで、上昇回避行動が起こるかどうかを観察することとした。まず、比較のために装置内のミツバチ移動経路の途中に設置したろ紙に水道水を滴下し、上昇行動を観察して上昇に要する時間を把握した。続いて、ろ紙にアンモニア水を滴下し、上昇時に揮発したアンモニアガスに曝露される状況を作り出して、同様に上昇行動を観察した。その結果、アンモニア水を滴下した場合に上昇に要する時間がやや長くなる傾向にあったが、統計的な有意差を見いだすには至らなかった。この原因として、ミツバチがアンモニアに強い忌避を示さないこと、ミツバチの行動特性として上昇行動が忌避行動よりも強く表れること、日射条件や風量などの外的要因が影響したことなどが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニホンミツバチの分峰群を近くの飼育者に分けていただいて飼育を開始したが、地域全体で分峰が少なく、かつ群の規模も小さかった。飼育を開始した群も通常のものより規模が小さく、短期間で逃去してしまい、その後新しい分峰群を確保することはできなかった。そこで、近くの飼育者に協力していただき、飼育場所に出向いて実験を行った。このような理由によって、全体としては進行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、群の逃去のリスクを避けるために、新たな分峰群を確保することはせず、近くの飼育者の方に協力していただき、飼育場所に出向いて安定的な実験を行うための環境を整備する。その上で、ミツバチ上昇観察実験を適用して、有害物質に対する行動観察を行い、評価方法確立のための条件設定や忌避行動の判断基準の決定を行う。そして、環境大気を対象とした有害性評価実験を行うことによって、方法の妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
ニホンミツバチの分峰群が短期間で逃去したために進行に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。有害物質に対する行動観察実験において使用する器材の準備に平成30年度分助成金と合わせて用いる予定である。
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