2016 Fiscal Year Research-status Report
排水処理リアクターの微生物生態系における食物連鎖の定量的評価
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16K14334
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
小野寺 崇 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (30583356)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活性汚泥法 / 食物網 / 下水処理 / 炭素・窒素安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、活性汚泥における微生物生態系を制御した実験を行うことで、微生物の食物連鎖の変化に対して、窒素安定同位体比がどのように変化するのか調べた。具体的には、捕食-被食作用の影響のみを把握するため、活性汚泥を飢餓条件下(曝気のみの条件)において運転した。このとき、活性汚泥を連続的に採取して分析に供することで、窒素安定同位体比等の変化を把握した。同時に、水質、汚泥量、微生物相、高次生物を把握し、汚泥の食物連鎖における捕食作用を示すデータを取得した。 本実験により得られた結果から、活性汚泥の濃度(MLSS, MLVSS, COD)と窒素安定同位体比の関係を把握し、汚泥の食物連鎖における捕食作用の解析を行った。以上により、安定同位体比の変化が微生物群集における捕食作用を示すデータとなることが示唆された。 これまで、生物学的排水処理法では、有機物分解や余剰汚泥の減容化に対して、微生物食物連鎖が重要な役割を担っていると考えられてきたが、その評価はほとんど行われていなかった。しかし本研究により、窒素安定同位体の自然存在比に着目することで、捕食に伴う同位体分別効果を利用して、微生物食物連鎖の機能(捕食効果)を定量的に評価できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおりに進展しており、研究成果も得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、活性汚泥の運転管理の指標であるSRTに対して、本研究で提案する食物連鎖の指標である窒素安定同位体比の関係性を調べることで、適切な運転管理に向けた食物連鎖の理解と制御のための基礎的な知見を得ることを行う。具体的には、SRTを長く維持することで、高次生物の出現等により生態系ピラミッドの食物連鎖長が長くなり、余剰汚泥の減容化がより進行しやすくなると考えられる。しかし、これまではSRTと食物連鎖の定量的な関係は不明であった。そこで、活性汚泥におけるSRTが異なる条件において、余剰汚泥の発生量と窒素安定同位体比の比較によって関係性を調べる。 また、本手法の実下水処理場への適用を目指して、実際の下水処理場における活性汚泥に関する窒素安定同位体比を比較する。流入下水と余剰汚泥の窒素安定同位体比の連続的な比較を行う。また、処理プロセスが異なる条件において、窒素安定同位体比と活性汚泥法の基礎的データの比較を行う。
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Causes of Carryover |
設備備品費として計上していたリアクター一式や試薬の一部に関して、研究の進捗状況に基づく軽微な予定修正を踏まえて、より効率的な研究の進展を図るとともに、研究資金の効率的な活用のために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額に関しては、リアクター実験を行うための備品等や炭素・窒素安定同位体比の分析のための試薬費用に加えて、研究の深化にむけて新たに分析項目を追加することに伴う消耗品や試薬、そして当初の予定以上の論文発表を見込んでいるため、英文校閲費用などに使用する予定である。
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