2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14341
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 敬 京都大学, 防災研究所, 教授 (00190570)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブラフボディ / 空力特性 / 直接測定 / 風圧力 / 加速度 / 飛散物 / 強風災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
台風や竜巻などの強風により生じる飛散物の多くは、砕石、木の枝、破壊された建物の部材など“流線型でない形状”をもった物体、すなわち“ブラフボディ”であり、飛散性状を予測するためにはそれらの空力特性を知ることが基本となる。通常これらの空力特性は風洞実験により求められ、その場合、物体は風洞に固定された状態で測定が行われることが多いので、物体と気流の相対風向風速がほぼ一定な状況の結果となる。一方、実際の飛散物は、周囲の気流性状の非定常性および自身の運動による姿勢の変化により、相対風向風速が時々刻々と変化する状況で飛散するが、流線型でない形状をもった物体であるブラフボディが、相対的な風向風速が変化する流れの中を飛翔する際の空力特性に関する情報はほとんどないのが現状である。 このため、飛散物の飛翔運動を精度よく予測するために非定常な流れの中を飛翔するブラフボディのもつ動的な空力特性を明らかにし、風洞実験のような定常流中で得られた静的な空力特性との差異を明らかにすることが強く望まれており、本研究ではそれらを明らかにする測定法を提案する。具体的には、並進・回転運動および表面圧力を記録するセンサーを埋め込んだブラフボディを作成し、飛翔中の3軸方向の加速度と回転速度、および、表面風圧力の時刻歴変化を測定して、ブラフボディが受ける力と姿勢変化を測定する方法を確立する。また、ビデオカメラにより飛翔経路を記録して比較用のブラフボディの3次元運動を求める。 これにより、ブラフボディの飛翔運動を予測し、建物の強風被害の原因である飛散物の衝突による衝撃力を精度よく推定することが可能となる。その結果、飛来物に対して要求される耐衝撃性能を適切に評価し、建物の飛散物に対する防御性能を高めるための、より合理的な耐風設計が可能となって、建物の強風被害低減に貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、飛翔中の空力特性を直接測定することのできるブラフボディ試験体を作成し、その性能を検証して、次年度に行う飛翔実験の準備を完了させた。 ブラフボディ試験体は、表面に多数の風圧測定孔をもつ流線型でないブラフボディで、種々の形状を作成した。並進運動の加速度、回転運動の角速度が測定できる6軸モーションセンサーと、風圧力を多点で測定できる圧力センサー、および、データロガーを組み込んだ自立型のデータ収集プローブを内蔵して、エアーキャノンによる射出、あるいは気球からの投下により高度30m程度の高さから落下させ、試験体自身の運動と加わる風圧力を測定するものとする。また、地上に落下する際の衝撃からデータ収集プローブを守り、回収後のプローブから測定されたデータを取り出せる構造とする。 これまでに、京都大学防災研究所所有の風洞を用いて、試験体の静的な空力特性を測定し、既存の実験結果との比較により、データ収集プローブを組み込んだブラフボディ試験体の性能検証を行った。さらに、約8mの高度から試験体を落下させ、落下時の地面との衝突による衝撃に対して、データ収集プローブの機能が損なわれないことを確認した。また、データ収集プローブにより試験体に加わる風圧力と加速度を測定し、比較のために、ビデオカメラでも落下の状況を撮影して、画像解析により物体の落下運動の軌跡を求め、速度や加速度を別途求めた。これらの結果を比較し、物体の運動に対応した圧力と加速度が得られていることを確かめた。ただし、加速度の変化については、センサーからの出力と画像解析からの値は、定量的には精度よい一致が得られなかったため、これらの精度を上げるための改良を加える必要が明らかになった。さらに、高高度(30m程度)からの落下に備え、気球を使った落下実験も行い、計測に必要となる治具や遠隔操作システム等の確認と問題点の洗い出しを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の結果、以下の解決すべき点が残されている。 ・試験体の回転運動を測定するためのセンサーの検定が行われていない。 ・試験体の落下時に、データ収集プローブに搭載されたセンサーから得られた出力の精度検証を行うための、ビデオ画像のクオリティが低く、比較用の姿勢データの精度が悪い。 平成29年度には、これらの問題点を解決・改良するために、回転速度を計測できるセンサーをデータ収集プローブに加える。ビデオ画像のクオリティを高めるため、試験体の明彩、照明方法などを改良したブラフボディ試験体を用いて飛翔実験を行い、飛翔中のブラフボディの空力特性を測定する予定である。 さらに、最終目標である飛翔中のブラフボディの空力特性を求めるためには、ブラフボディと周囲の空気との相対速度を知る必要がある。そのためには試験体が落下する領域の風速分布が必要となるが、その計測は非常に困難であるため、本研究では無風の空間で実験を行うこととする。これにより、試験体の速度と姿勢を測定することで、相対風速を求めることができる。無風の空間としては、風の吹かない気象条件のもとで行うのが理想であるが、屋外の実験では気象条件に左右される可能性があるので、室内で行うことを予定している。その際、できるだけ長い飛翔時間を確保するため、広い空間、高い位置から落下させることができるように、大型のドーム建物を借り切って屋内実験を行うことも予定している。落下実験は種々の形状をもったブラフボディ試験体を気球や天井から垂らしたロープに吊り下げ、落下・飛翔開始位置の高度や姿勢を変化させた測定を行う。あるいは、エアーキャノンにより飛翔開始時の速度と角度を変化させた測定を行う。このように、ブラフボディの形状や飛翔条件を変化させて、飛翔中のブラフボディの空力特性の直接測定を行い、ブラフボディの動的な空力特性の変化を明らかにする予定である。
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