2017 Fiscal Year Research-status Report
共存状態でのカビ生育特性に及ぼす競争原理の影響の解明
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16K14349
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
柳 宇 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50370945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍵 直樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20345383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 建築環境 / カビ / 競争原理 / マイコトキシン / DNA / MVOC |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度では、4種類の真菌Cladosporium sphaerospermum, Penicillium chrysogenum, P. expansum, Rhodotorula mucilaginosaと2種類のマイコトキシンpatulin、T-2を用いた実験を行った。実験には、在来の微生物分野でよく用いられるディスク法と、研究代表者らが考案したスパイラルプレダー法を用いた。スパイラルプレダー法を用いれば、少量のマイコトキシン液で高濃度が得られるメリットがある。 実験の結果、次の事柄が明らかになった。 (1)ネガティブコントロールを用いた場合において、真菌の抑制が見られず、水分量による影響がないことを確認した。 (2)C. sphaerospermumとP.chrysogenumに与えるマイコトキシンの影響、すなわちその真因の生育特性、が異なる。 (3)ネガティブコントロールに比べ、patulinとT-2 toxinによるC.sphaerospermとP. chrysogenumのコロニー数の低減割合はそれぞれ18~25%と42~57%であった。これらの結果はC.sphaerospermumとP.chrysogenumの生育がマイコトキシンによって抑制されることが明らかになった。 (4)さらに、P.chrysogenumとP.expansumを用いた実験の結果、同じ属菌でも菌種によって、マイコトキシンの抑制特性が異なることが明らかになった。 次年度では、DNAの量を測定できるナノドロップを購入し、マイコトキシンによる真菌抑制効果をDNAの損傷程度の側面から評価する。また、同時にMVOC(真菌由来揮発性有機化合物)を測定し、真菌の生育抑制前後の代謝物の変化を比較する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では、計画通りマイコトキシンと試験用真菌を購入し実験を行った。研究の詳細結果を前記の研究実績概要を参照された。また、その研究成果を国際学会Healthy Building 2017 Europeで発表した(Yuriko Shimura, U Yanagi, Naoki Kagi, The Effect of Mycotoxin to other Fungus Growth Characteristics, Healthy Buildings 2017 Europe, Paper ID 0215 ISBN: 978-83-7947-232-1, 2017)。 当初、今年度にDNA量を測定し、マイコトキシンによる影響をDNAの損傷程度の視点から評価する予定であるが、研究費の面でそのDNA測定器(ナノドロップ)の購入が1年遅れたたため、その部分の実験が次年度で行うこととなった。関連して、同時に行こなう必要のあるMVOC(真菌由来揮発性有機化合物)の実験も次年度で行うこととなった。 しかし、今年度では、マイコトキシンによる真菌の抑制特性を定量的に把握できたため、次年度の研究は計画通りに行えることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、下記の研究を実施する予定である。 (1)共存状態でのマイコトキシンによるほかのカビのDNA量の影響に関する実験的な研究(担当:研究代表者 柳 宇) 前年度の研究で得られた優占種のマイコトキシンを用いて,それによるほかのカビの抑制特性をDNA量の変化より評価する。また、真菌の種類についても成長の遅い好乾性真菌を加える予定である。 (2)共存状態でのマイコトキシンによるほかのカビのMVOCの成分と量の影響に関する実験的な研究(担当:研究分担者 鍵直樹) 上記(2)の実験と並行して、マイコトキシンよるカビの抑制特性をMVOCの成分と量の変化の視点から評価する。
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Causes of Carryover |
実験に使用する試薬などが高価なため、本年度の一部費用を次年度に繰り越し、次年度でまとめて系統的に実験を実施できるためである。
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Research Products
(6 results)