2016 Fiscal Year Research-status Report
地方版総合戦略にみる公共施設再編の重要業績評価指標と生活圏のグランドデザイン
Project/Area Number |
16K14351
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森 傑 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80333631)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共施設 / マネジメント / 重要業績評価指標 / 人口ビジョン / 地方創生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、A.地方版総合戦略における公共施設マネジメントの位置づけと俯瞰的把握、B.公共施設再編に関わる重要業績評価指標(KPI)の体系的整理と比較分析を踏まえ、C.公共施設を核とした生活圏グランドデザインのアクションリサーチと実地検証を通じて、自立的で持続的な生活の再生・再構築へ向けて実効性のある公共施設マネジメントの計画論と計画手法の萌芽的知見を得ることを目的とし、以下の3段階で研究を遂行する。 (1)地方版総合戦略について、地方自治体ごとの社会的・経済的状況に注目しながら、公共施設再編に関する項目や事項の検討経緯と策定内容に関する俯瞰的な把握を行う。 (2)地方版総合戦略における具体的な施策のKPI(重要業績評価指標)に焦点を当て、公共施設の再編に関わるKPIの内容とその根拠および施策効果の検証方法(PDCAサイクル)について、傾向やパターンあるいは差異を分析する。 (1)(2)を踏まえ、北海道の上士幌町でのアクションリサーチを通じて、公共施設を核とした生活圏グランドデザインを実地に検証し、自立的で持続的な生活の再生・再構築へ向けて実効性のある公共施設マネジメントの計画論と計画手法の萌芽的知見を得る。 平成28年度は、北海道179市町村における公共施設マネジメントの検討状況について、各市町村の高齢化や人口減少といった社会的状況および地方財政や起債、補助金といった経済的状況に注目しながら、公共施設の再編や再配置などに関する項目や事項の検討経緯と策定内容に関する悉皆調査を行った。加えて、公共施設マネジメントを積極的に施策の中で位置づけている事例について、具体的な目標と計画がどのように検討されてきたのか、地方版総合戦略のその他の施策との関係はどのように整合が取られているのか等、地方版総合戦略の策定プロセスについての詳細な情報の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、北海道179市町村における公共施設マネジメントの検討状況を整理すべく、公共施設等総合管理計画(以下、管理計画)と都市計画マスタープラン(以下、都市マス)内の公共施設整備に関する記述内容に着目し、両計画の策定内容の相互関係の把握を行った。 北海道内の市の自治体公式ホームページを閲覧し、管理計画と都市マスの両計画を定め、かつ両計画の資料をホームページ上で掲載していた16市を対象に調査を行った。両計画における公共施設マネジメントに関する内容について、どのようなことがどの程度言及されているのかをみるために、公共施設再編によって見込まれる効果の視点から2項目「長寿命化・維持管理」「コスト縮減・平準化」と、施設再編の方法の視点から6項目「複合化・集約化」「用途変更」「跡地活用」「分散化」「官民連携」「近隣都市との連携」について、両計画からそれぞれの項目に該当する記述を抜粋し分析を行った。 その結果、施設の長寿命化やコスト縮減などの公共施設マネジメントの基本方針となるような内容は管理計画と都市マスの両計画に記述がみられ、施設の複合化や跡地活用、官民連携の導入のような公共施設マネジメント方法の内容に関しては、対策方法によって両計画の内容の重複具合に差がみられる状況が把握できた。 また、両計画で共通して述べられている施設種に着目すると、基本的に、管理計画においては施設単体へ向けた記述内容がみられ、一方の都市マスにおいてはまちづくりや社会情勢などの施設以外の視野を含んだ記述内容がみられた。各計画策定の対象範囲が定められている傾向がみられるが、自治体によって計画対象範囲の明瞭さに開きがあることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、北海道179市町村における地方人口ビジョンおよび地方版総合戦略について、各市町村の高齢化や人口減少といった社会的状況および地方財政や起債、補助金といった経済的状況に注目しながら、公共施設の再編や再配置などに関する項目や事項の検討経緯と策定内容に関する悉皆調査を行う。また、特に公共施設マネジメントを地方版総合戦略の中へ積極的に位置づけている事例について、その自治体規模(人口と財政)に留意しながら、具体的な目標と計画がどのように検討されてきたのか、地方版総合戦略のその他の施策との関係はどのように整合が取られているのか等、地方版総合戦略の策定プロセスについての詳細な情報を収集すべく、ヒアリング調査を実施する。 また、KPIとは一般に目標の達成度を図るための計量基準であるが、地方版総合戦略には施策ごとのKPIの明記が求められている。客観的な数値目標が重視される一方で、当然施策の内容によっては数値化が難しいものもある。公共施設の再編・再配置も、総量削減に関してはある程度の数値化ができるものの、そもそも公共施設で支えられる生活の質とそのリアリティは必ずしも数値化できるものばかりではない。また、そもそも短期的(平成31年度までの5か年)に成果を示し評価すること自体が困難である。地方版総合戦略において公共施設マネジメントを位置づけている道内市町村へのヒアリング実施し、公共施設の再編・再配置に関わるKPIの内容とその根拠および施策効果の検証方法(PDCAサイクル)を把握し、共通する傾向やパターンあるいは差異を分析する。
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