2017 Fiscal Year Research-status Report
アクティブ・ラーニング場面における集中・注意回復の制御と環境
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16K14353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 ゆりか (今井ゆりか) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 勝樹 女子美術大学, 芸術学部, 教授(移行) (20230659)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 建築計画 / 美術館・博物館 / 展示施設 / アクティブ・ラーニング / 注意回復 / 記憶 / 集中 / 小学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
目標のうち、①美術館・博物館におけるアクティブ・ラーニングについて情報収集:以下の3つの美術館における子どものハンズオン・プログラムの海外事例について取材し、まとめた。1) ベルリン市のユダヤ博物館、2) ロサンゼルス市郊外のゲッティ・アート・センター、3) 森美術館のレアンドロ・エルリッヒ展 それぞれ子どもの注意を引き、集中させる仕掛けと、展示と展示の間に注意を解放させる静かな空間とがとってあり、子どもにとって適度な展示密度を保つ配慮が認められた。 ②美術館・博物館における鑑賞後の環境が記憶に及ぼす影響について:昨年度は実験室実験で鑑賞後の環境による見たものの記憶への影響を検出したが、今年度は実際の美術館において、鑑賞時と鑑賞後の歩行時との状態を計測するフィールド調査を行い、実際に心身の状態に変化があることを計測した。 ③小学校におけるアクティブ・ラーニングのための集中環境の調査:小学校教室での学習場面において、特に集中をそがれやすい教育的支援を必要とする子どもの集中を助けるために必要な要件を、以下の2点について明らかにした。・教室内にクールダウンスペースの設置・典型的座席配置時における適切な座席位置。 以上より、アクティブ・ラーニング時の子どもたちの学習要件として、集中と注意の解放との適度な繰り返しが必要であること、教室内でも集中しにくい子どもたちにとっては、クラスの情報が得られる距離でクールダウンできる静かな区画が必要であること、などの議論が進んだ。 現在、美術館・博物館における集中・注意回復の環境についてと、また小学校の学習場面における教育的支援を必要とする子どもたちの集中・注意回復の環境について、それぞれ成果をまとめつつあり、今後は論文投稿・国際会議での発表などを進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた施設とは異なるが、米・欧の有名美術館・博物館のうち、教育プログラムに特に定評のある2施設の取材ができ、また米国の例については学芸員に取材することができなかったが、欧州の例では取材ができ、当初予定どおりではないものの一定の情報が得られたと考える。 また、鑑賞後の環境の違いにより、実際に心身の状態が異なることを、十和田市現代美術館で計測し、昨年の実験室実験の成果が実際の空間にも当てはまることを示唆することができた。 学校における子どもの学習場面については、教育的支援を必要とする子どもたちについて集中を持続するための環境要因をいくつか明確にすることができた。これらの子どもたちがより集中して学習に取り組むことができることは、クラス全体にとっても学習効果をあげる効果を生むものと考えられ、有益な研究成果があがったと考える。 以上より、当初計画を変更したところがある一方で、予想以上の成果があがった部分もあり、全体としては概ね良好な進捗と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は米欧の施設および行政への渡航調査を想定していたが、事前調査で想定していた状況と異なって欧米の文教政策方針が不安定な状況となっているため、米欧の施設の情報収集はひとまず本年をもって切り上げ、来年度は国際会議等でこれまでの成果を発表することに力を注ぎ、会議開催地での補足的施設調査の可能性を模索することにした。 その他の実験・調査等については概ね本年をもって修了したため、これらの成果の論文化にも注力したい。
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Causes of Carryover |
当初は米欧の現地施設および行政の聞き取り調査をする予定であったが、事前調査で想定していた状況と異なって欧米の文教政策方針が不安定な状況となり、十分な聞き取りができないと判断したため、現地取材は最小限とし、国内施設における実験・調査による検証を追加することに切り替えた。そのため海外旅費がなくなり、国内旅費と海外施設取材を一部代行しレポートを作成した学生への謝金が支払われた。変更による差額が大きかったため、残額が出た。なお、海外旅費は次年度の国際会議発表で使用する予定である。
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Research Products
(4 results)