2016 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド仮設住宅開発のための設計支援と紀伊半島における社会ネットワークの構築
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16K14355
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木多 道宏 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90252593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 元毅 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30595723)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハイブリッド仮設住宅 / 供給システム / 備蓄スペース / 事前復興計画 / 仮設市街地 / 井戸 / ワークショップ / マスタープラン |
Outline of Annual Research Achievements |
【課題A】設計・シミュレーション:ハイブリッド仮設住宅のデザインについて、木材と鉄骨系部材の組み合わせ、備蓄時のコンパクトさ、組立・解体・運搬のしやすさ等の観点から検討を行い、軽トラックが農地の細街路でも運搬できるよう、軽量鉄骨のフレームと、木材パネルによる外装・間仕切り壁の構造体を構想した。間取りについて、広川町の民家に関する当研究室の調査結果の蓄積を参照しながら、地域の固有性を取り入れることが可能か検討した結果、供給の迅速性を優先し、県や協会の設計標準を踏襲することとした。地域の固有性については、むしろ建物の配置や、玄関へのアプローチ、外構における樹木・生垣の配置など、敷地・街区の空間構成に継承することが適切であると判断し、建物の配置パターンを提案した。 以上の検討のため、東日本大震災被災地の仮設住宅と復興まちづくりの事例を調査した。 【課題B】備蓄スペースの検討:ハイブリッド仮設住宅の生産・供給元として想定する十津川村において、備蓄用地の候補を検討した結果、旧川床が浚渫土砂で埋め立てられた串崎地区が立地と面積等の面で適切であると判断され、十津川村に提案したところ採用された。 【課題C】ワークショップによる実装用地の検討:被災後の仮設住宅への移転を一度きりとするため、仮設住宅用地は、将来の街として育成できる条件を備える必要がある。町民・行政とのWSを企画するに当たり、仮設住宅用地を直裁的に検討するのではなく、過去から集落や農地に開かれてきた井戸の位置や水質、役割を思い出し伝え合う機会とし、地域に詳しい農家や高齢の方々に集まっていただくこととした。井戸は非常時のライフラインになるだけでなく、新住民も参加する新たなコミュニティの核ともなり得る。この井戸探しWSをH29年1月に開催し、多数の井戸の所在を予め作成した地域の模型にプロットし、新たに開削するべき井戸の位置の提案も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題Aについては、模型を20パタン以上作成することにより、デザインの方向性をある程度系統的に提示するとともに、それぞれの長所短所を整理することができた。風解析ソフトにより、仮設住宅の配置パターンが室内外の風環境に及ぼす効果について検討したが、技術的な課題が克服できず、次年度の課題とした。 課題Bは平成29度までに備蓄用池を決定する予定であったが、平成28年度までに実施することができた。平成29年度は、用地の利用計画の検討に専念することができる。 課題Cについては、ワークショップを開催することが非常にハードルの高い目標であったが、町民と行政の協力を取り付けて実現し、さらに、広川町主要部の11の大字にわたる広域のエリアについて検討することができた。成功の要因として、土地利用や借地・換地を直接的に議論するのではなく、井戸をテーマとしたWSを着想することで、町民や行政が取り組みやすい内容としたことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【課題A】設計・シミュレーション:ハイブリッド仮設住宅のデザインについて、前年度からの検討を継続する。木材と鉄骨系部材の組み合わせについて、より最適な提案があり得るかどうか検討するため、備蓄時のコンパクトさ、組立・解体・運搬のしやすさに加え、冷暖房負荷、コスト、風環境などの観点からシミュレーションを行い、外装材、断熱材、床材、屋根材などの設定も行う。最終的に、接合部や部材断面など詳細にいたる設計案を提案する。 【課題B】備蓄スペースの検討:前年度までに、十津川村串崎地区を候補地として決定したため、引き続き、当該地区について、備蓄スペースや付属施設等の具体的な配置計画を検討する。 【課題C】ワークショップによる実装用地の検討:井戸探しWSの提案を基に、町民と協働し井戸掘りを実践する。掘削した井戸は(将来に本格的な街として育成する)仮設住宅用地の核として有力である。また、仮設住宅用地の育成を盛り込んだ都市・地域計画マスタープランの原案を作成し、WSにより案の共有と改善を図る。 【課題D】仮設3タイプ(木造、プレハブ、ハイブリッド)を横断するマネジメントのしくみの提案:広川町で鉄骨系仮設住宅の実装実験を行っているグループ(京都工芸繊維大学・阪田弘一准教授、大和リース、筆者ら)や、木造仮設住宅の供給力を検討しているグループ(和歌山大学・平田隆之准教授)らと協力し、広川町における仮設住宅供給の分担やマネジメントについて、体制やしくみづくりの検討を行う。 【課題E】まとめ(中域のネットワークによる仮設住宅供給システムの提案):課題A~Dの成果を基に、迅速性・供給量・備蓄・居住性・景観・省エネルギーの点ですぐれたハイブリッド型仮設住宅の設計、紀伊半島スケールでの仮設住宅生産・供給システムの提案、技術面から用地確保のしくみづくりまで一貫した供給システムの提案を行う。
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