2017 Fiscal Year Research-status Report
海外における「日本型生産システム」の進化と我が国における適用可能性に関する研究
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16K14359
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
志手 一哉 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (60505353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蟹澤 宏剛 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (00337685)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロジェクト運営方式 / コンカレントエンジニアリング / コストマネジメント / 発注者 / BIM |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度に米国とシンガポールの建築生産システムを調査し、H29年度に2本の審査付きシンポジウム論文(「米国におけるIntegrated Project Delivery (IPD)に関する研究-民間IPD約款の比較-」「シンガポール建設プロジェクトにおける諸制度運用に関する研究-建設プロジェクト主体者へのヒアリング調査を通じて-」)を発表した。H29年度は、シンガポールの追加調査を実施し、日本ゼネコンの設計施工一貫方式に似た方式で、発注者であるデベロッパーが施工部門を有しているケースを確認した。さらに、調査対象を「パートナリング」発祥の国である英国に拡大し、近年増加傾向にある「2段階オープンブック」について発注者・設計者・施工者へのヒアリングを実施した。この方式は、日本で言うところの詳細設計付施工に近い。また、米国・英国・シンガポールの建築生産システムを融合したBIMガイドラインの策定を目指しているベトナムを調査し、施工技術の発展に先立って建築生産を取り巻く社会システムが整備されつつある状況を確認した。いずれの調査国においても、設計と施工性を融合的に検討する「日本的コンカレントエンジニアリング」の方向にプロジェクト運営方式がシフトしつつある。そのプロセスは日本のやり方と似ているが、それを実行するための専門職能の在り方や契約方法が異なっている。また、BIMに関しては、その適用を推進する目的として「コンカレントエンジニアリング」と「コストマネジメント」が挙げられていた。したがって、コンカレントエンジニアリング化が進む各国の建築生産システムを日本に逆輸入するポイントは、「コストマネジメント」にあり、その主体が発注者に帰することと仮説を設定できる。これらの研究成果はH30年度に2本の審査付きシンポジウム論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた米国とシンガポールの現地調査をH28年度に概ね終えたため、H29年度は研究範囲を拡張して英国とベトナムの調査を実施した。この結果、米国のようなプロジェクト中心、英国のような政府中心、日本のような企業中心、コンカレントエンジニアリング化の傾向を、シンガポールのような政府のインセンティブによる企業誘導型、ベトナムのような先進国の良いところを融合する型という分類を網羅する形で情報を整備することができた。これまでに得た情報は各々の国別に審査付シンポジウム論文として整理を進めた。さらにH29年度に分類コードシステムの調査に取り組み始め、米国のOmniClassと英国のUniclass2015について情報収集をした。調査の実施状況、論文等での発表状況共に順調な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度のH30年度は、①これまで調査した各国における現地調査の結果を比較分析、②日本における主としてコスト情報を中心に建築生産情報プロセスの生成過程を整理、③米国的なCM、英国的な専門分化、シンガポールにおけるビルダビリティなどコンカレントエンジニアリングを実施する役割や方策の日本の建設業における受容、の3点を中心に研究を遂行する。各研究は、研究メンバーが所属する学協会の協力を得て進めていく方針である。①~③の研究成果は次のように取り纏める予定である。①についてはBIMや分類コードを中心とした比較をして査読付シンポジウム論文として発表、②については研究代表者が所属する日本建築積算協会情報委員会主催のシンポジウムにて発表、③については研究代表者が所属するプロジェクト運営方式協議会にてアンケート等を実施して論文等に整理する。
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Causes of Carryover |
物品費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。次年度の助成金はアンケート実施の費用として使用する計画である。
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Remarks |
研究代表者の志手を含む複数の執筆者が隔月の持ち回りで執筆するコラムのコーナーにおいて、研究に関する考察を世に問うために、本研究に関する内容を数回記載している。
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