2016 Fiscal Year Research-status Report
医療的ケアを必要とする児童生徒の学びを保障する教育環境整備基準に関する研究
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16K14362
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
菅原 麻衣子 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (90361790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是枝 喜代治 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70321594)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療的ケア / 肢体不自由 / 特別支援学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画のとおり、肢体不自由部を有する特別支援学校において、医療的ケアを必要とする児童生徒の施設環境整備に関する課題を、アンケート調査とヒアリング調査から捉え、欧米の特別支援教育事情の情報収集を実施した。 まずアンケート調査は、全国の肢体不自由部門を有する特別支援学校(約250校)を対象とした調査結果をとりまとめ、日本建築学会において査読付き論文「特別支援学校における医療的ケアへの対応からみた教職員の施設整備要望」の掲載(2018年4月)が決定した。本論文では、学校施設の設計段階から考慮すべき内容として、経管栄養が必要な児童生徒も共に過ごせるランチルームの整備、教室内で衛生管理に必要な給湯設備の設置、吸引時にどこの学習場所でも電源を確保できるコンセントの増設等を提示した。 次にヒアリング調査は、都立の特別支援学校2校で実施した。いずれも近年新築され、知的と肢体部門の併設である。1校目では、冬場は教室内に数台の加湿器を補助的に入れていることや、医ケア専用室を1箇所に設けるのではなく、教室内で医ケア対応していること等が捉えられた。同様に2校目でも冬場の感染症は命の危険にも及ぶことから、徹底した環境制御が必要であり、知的部門とのゾーン区分や児童生徒の動線整理について貴重な知見を得た。 最後に、欧米の情報収集としてデンマークの特別支援学校2校と通常学校1校、学校との連携から障害児専用保育園1ヶ所を現地調査した。世界的なインクルージョンの潮流と、自国の地方行財政の改革が並行し、インクルージョンが進んだ学校もあれば、行き過ぎたインクルージョンにより、個別支援教育へのゆり戻しが起こっている面も捉えられた。また医ケア対応について、今回の調査校では自宅に教員が出向く訪問教育であった。この点は今後調査対象を増やし、医ケアが必要な児童生徒にとってのインクルージョンの意味と場のあり方を追究したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に基づき、1点目として、全国の肢体不自由部門を有する全国の特別支援学校でのアンケート調査結果を計画とおりまとめた。 2点目として、特別支援学校でのヒアリング調査は3地域を予定していたところ2地域にとどまったが、研究のねらいに即した知見が得られた。 3点目として、欧米の特別支援教育事情の資料収集については、ヒアリングの残り1地域をデンマークに充てることで、現地での資料・情報収集を行うことができた。ただし、医ケアに関する対応については、さらなる事例収集が必要である。 以上の研究成果を通じて、当初の目的である特別支援学校の施設整備について普遍的かつ個別的課題を概ね整理することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、公立小中学校における医療的ケアへの対応を捉えることを予定している。初年度と同様にアンケート調査を予定しているが、医療的ケアが必要な児童生徒は全国の小中学校で800名程度であり、学校リストが公開されていないため直接的なアンケート実施は難しく、教育委員会等との調整が必要な状況である。この点は、医療的ケア児を支援する市民団体とコンタクトを取り、アンケートという手法が最適であるか、他によりよいアプローチがないか、助言を得た上で調査手法を検討・実施する予定である。 またその調査手法に基づき、ヒアリング調査対象校についても調整・決定していく。 欧米の特別支援教育に関する資料収集については、前年度に残された課題として特別支援学校に関する事例収集を継続すると共に、通常学校の資料収集も計画通り進めていく。
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Causes of Carryover |
残額は876円と微小であり、ほぼ計画通りに予算執行した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費・謝金の執行割合がすでに高くなっているため、この費目に充てることとする。
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Research Products
(2 results)