2016 Fiscal Year Research-status Report
磁気異方性の変化を利用した新型エネルギー変換薄膜材料
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16K14372
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
史 蹟 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70293123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春本 高志 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80632611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応力 / 磁気異方性 / エネルギー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCoPt/AlN多層膜の外部応力をかける方法,および外部応力の影響について研究を進めた.
応力のかける方法は,まず,水素吸蔵による体積の変化で外部応力を引き起こす方法である.この方法は,薄膜の表面あるいは背面の基板側に数十ナノメートルのPd膜を堆積し,Pd膜が水素を吸蔵できる性質を利用して,応力を導入する方法である.応力を導入しやすいため,薄い(0.1 mm)の石英ガラス基板を使用した.結果としては,Pd膜を堆積するだけで,CoPt/AlN多層膜の応力状態が大きく変わることがわかった.つまり,多層膜の磁気異方性を,例えば,垂直磁気異方性から面内磁気異方性へ変化するほどの応力変化が引き起こすことができる.一方,水素の吸蔵については現時点で異方性エネルギーを変化させることができるとの結果が得られている.以上のことから,CoPt/AlN多層膜を成膜する後に外部応力をかけることにより多層膜の磁気異方性を変化させることを可能であることがわかった.一部の結果は以下の論文にまとめ,雑誌「AIP Advances」に投稿している. In-situ X-ray diffraction study of hydrogen absorption and desorption processes in Pd thin films: hydrogen composition dependent anisotropic expansion and its quantitative description
また,CoPtを成膜中窒素原子混入の磁気特性への影響や,界面応力によりFePtとNiOの界面でのスピン相互作用についても研究を行った.それぞれの結果をまとめて,論文投稿あるいは発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で,CoPt/AlN多層膜が成膜後に外部応力による磁気異方性を変化させることを可能であることがわかった.つまり,外部応力は薄膜内部応力と同じように薄膜の磁気異方性を大きく影響することを明らかになりました.この結果から,本研究計画で考えているエネルギー変換は原理的に可能であることがわかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の静的応力の結果を踏まえて,29年度の研究計画は以下のように予定している. 1.動的応力の効果の検証:静的応力の実験でもっとも磁気異方性の変化が顕著の薄膜試料に対して,振動により動的応力を導入する実験を行う.この場合磁場中で,ピックアップコイルを使って電気的な信号を直接観測することにする. 2.材料の安定性:振動環境下の材料の組織,物性の安定性を調べる.また,安定性を改善する方法,例えば熱処理などを考える. 3.材料性能の最適化:多層膜の各層の厚さや,周期,結晶方位の制御,熱処理条件などによって,振動エネルギーハーべスティングデバイス材料としての物性を最適化する. 実際に変形振動加える際,薄膜材料と基板材料の弾性変形範囲内で振動させるため,全体の変形量が小さいが,薄膜表面層には大きな応力がかかると考えられる.この変形を繰り返すことで機械的なエージングがおき,薄膜の組織,応力状態が時間的に変化することが考えられる.特に熱処理していない試料に可能性が大きいと考えられ,熱処理条件と薄膜の安定性の関係についても調べる予定である.
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Research Products
(1 results)