2016 Fiscal Year Research-status Report
バイアス電圧による電子熱伝導度の制御と革新的熱スイッチ材料の創製
Project/Area Number |
16K14375
|
Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
竹内 恒博 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293655)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 熱スイッチ / 熱伝導度 / 熱ダイオード / 格子熱伝導度 / 電子熱伝導度 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石燃料の燃焼により得られる熱量のうち,電力などに変換され有効に利用されているエネルギーは40%程度であり,残りの60%は低温廃熱として捨てられている.発電所,工場,自動車,家庭などで発生した熱を,必要とする箇所に運び,有効利用することが強く望まれている. 固体材料を流れる熱流は,フーリエの法則で記述されるため,固体材料中において任意の方向に熱を振り分けることは容易ではない.機械的要素(接触・切断機構)を導入すれば熱の振り分けは可能であるが,システムの巨大化,設置費用,メンテナンス等の問題から,エネルギー効率化のために導入された例はない.機械部品なしに固体材料において熱流の大きさや方向を制御することができれば,その市場価値は極めて高いと判断される. 上述した社会的要求に対応するために,本研究では,熱流を任意の方向に振り分けることが可能な革新的熱流制御材料を開発することを最終目標としている.この目的を達成するために,金属や半導体内の電子濃度を電場により制御し,電子濃度の変化を通して電子熱伝導度を著しく変化させる技術を確立する.さらに,電子熱伝導度の変化を目的に応じて最適化する指針を構築し,構築した指針に基づき,実用化可能な革新的熱流制御材料(熱スイッチ材料)を創製する. 平成28年度に行った研究では,格子熱伝導度が著しく小さい半金属材料にバイアス電圧を印加することで,熱伝導度に変化が生じることを実証した.一方で,電子濃度を有効に変化させることができるのは試料表面のみであるため,得られる変化は5%以下であった.現在,この問題を解決するための素子構造を考案し,その有効性を確かめる実験を行っている.これにより,バイアス電圧の印加で熱伝導度が1桁以上変化する素子の創製を行えると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熱伝導度測定装置の作製に,予定よりも多くの期間を要した.また,提案した機構により熱伝導度が変化することが確認できたものの,その肝となる電子濃度変化をバルク全体に広げることができなかった.この問題に関しては,電磁気学の考察が十分でなかった為であると考えている.ただし,問題は解決可能であることが確認できている.
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題において作製した装置でバルク材料の熱伝導度が測定できるようになったことに加え,新たに導入した時間分解サーモリフレクタンス法により,薄膜状態でも熱拡散率が求められるようになった.表面電荷をより有効に使えるのは薄膜であることから,薄膜素子を作製し,時間分解サーモリフレクタンス法により熱拡散率を解析することで,目的の機能を有する材料の創製を行っている.平成29年に,バイアス電圧の印加により.熱伝導度が1桁以上変化する素子の創製を目指す.
|
Research Products
(9 results)