2016 Fiscal Year Research-status Report
貴金属や外場を用いずに常温常圧近傍で作用する水浄化材料の開発
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16K14382
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00302795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Mn / CeO2 / TiO2 / 光触媒 / 暗所 |
Outline of Annual Research Achievements |
アセチルアセトン塩とアルコールを用いたCCC(chemisorption calcination cycle)プロセスによりMnOxとCeOxのクラスターをルチル型TiO2に担持し、その触媒粉末の50oCでの水中での2-ナフトール分解活性について、暗所と可視光照射下で調査した。MnOxやCeOxのクラスターを担持することにより、暗所での2-ナフトールの分解活性が増大するとともに、TiO2のバンド狭窄が起こり、可視光活性が付与された。分解活性の反応速度定数、比表面積、表面濃度から、MnOxとCeOxを組み合わせることは、それぞれを単独で担持する場合より活性が高いことが示唆された。また暗所での繰り返し使用によりMnOxやCeOxのクラスターは還元されるが、紫外光照射と80oC加熱により活性は再生することが明らかになった。また、水熱合成法によりMoとWが元素比でほぼ1:1の固溶体酸化物を作製した。得られたMo-W固溶体酸化物は斜方晶WO3型の結晶構造を有しており、構造中に1式量当たり0.22モルの水を含んでいた。この固溶体酸化物は500oCで3時間の焼成により脱水し、単斜晶WO3型の結晶構造に転移した。Mo-W固溶体にCuCl2溶液を用いて異なる手順でCuを担持したところ、未焼成の(水熱所入り直後の)Mo-W固溶体酸化物にCu担持後焼成した試料が可視光照射下で最も高い光触媒活性を示した。このプロセスでは焼成過程において、固溶体酸化物表面でHedvall効果によりCuがCuWO4となり、これとMo-W固溶体酸化物とのZスキームにより、活性が発現したことが示唆された。この材料は可視光照射下でも暗所でも、水中で抗菌活性を発現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施を予定していた課題は、順調に検討が進んでいる。酸化チタンとMnOxクラスターを適切に組み合わせることにより、可視光照射下だけでなく、暗所においても、常温近傍で分解活性を発現する材料が作製できた。またその活性がMars-van Krevelen機構によるものであることを明らかにし、繰り返し使用により失活した触媒活性を、紫外線照射や100度以下の加熱を行うことにより再生することが可能であることも明らかにした。さらにこれらの反応をCeO2が効果的にアシストすることも判った。この材料ではルチルが特に有効であることが判ったが、TiO2の他の結晶相であるアナターゼやブルッカイトでも、光電着を効果的に用いれば、同様の材料と活性を得られる可能性が見いだせている。またMnOxとルチルとの界面にSnを若干入れた中間層を形成すると、暗所での分解活性がさらに向上することも明らかになっている。 さらにMoとWの固溶体酸化物を用いて、これにCuをHedvall効果を経由させて反応させることにより、Zスキームを効果的に形成し、可視光応答型光触媒とすることができること、この材料は可視光照射下でも暗所でも、水中で抗菌活性を発現することを明らかにした。これらは近未来にその脅威が懸念される、ウィルスパンデミックに対応できる新しい環境材料になる可能性を秘めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はプローブ顕微鏡を駆使してMnOxのTiO2上での場所の特定と、その状態の解析を行う。TiO2はルチルの単結晶を用い、そこにCCCプロセスでMnOxを製膜して評価する。また、アナターゼやブルッカイト上に効果的にMnOxを作製可能な光電着法も検討する。光電着法に依る試料については、まだ表面状態が十分に解析できていないため、TEMやXPS等で詳細な解析を行う。またルチルのナノロッドを作製し、それにMnOxを担持することで、結晶面方位の露出の程度が及ぼす効果についても検討する。さらにTiメッシュ上にアナターゼ構造のナノロッドを作製し、そこへMnOxを光電着させることで、電位をアシストに用いた水浄化システムの実現の可能性についても調査する。MoとWの固溶体酸化物に関しては、比表面積がまだ低いので、試料の作製方法を見直し、現状(6 m2/g)から5倍程度の表面積向上を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度に残額が発生したが、これは、当初参加を予定していた国際会議(MRS2016, ボストン, 学生のみ派遣)への参加を、学内業務(コース主任業務)との兼ね合いで取りやめたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定を上回るペースで検討が進展していることから、本年度は5月に国際会議(PacRim)で発表を予定しており、既にエントリーしている。当初想定していなかった抗菌活性が得られる材料が開発できていることから、その点についても本年度はさらに詳細に検討していく。
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Research Products
(8 results)