2016 Fiscal Year Research-status Report
電界効果を用いた非平衡イオン拡散制御による無電力プロトンポンプ
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16K14387
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神吉 輝夫 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40448014)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 機能性セラミック材料 / イオン伝導体 / 電界効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
MgO犠牲層エッチングを利用したナノスケールの間隔をもつエアーギャップを持つ3次元トランジスタを作製し、エアーギャップへの電界印加によって生じる酸化物への侵入電界を利用した電力フリーなプロトン輸送・貯蔵の前段階実証を行った。その結果、本年度は下記の成果を得た。 1)ナノ間隔エアーギャップを有する3次元トランジスタの作製 我々は、これまでもMgO犠牲層エッチングを利用した酸化物3次元マイクロ電気機械構造を作製してきた。3次元トランジスタは、これまでの技術を活かし、フォトリソグラフィーによるデバイスパターンと犠牲層エッチングによる400nmナノ間隔を持つエアーギャップの作製に成功した。 2)酸化物中のプロトン輸送・貯蔵の電界制御と評価 VO2はゲート電界による水素化により、電気抵抗率が大きく変化するため、酸化物のソース-ドレイン間の抵抗値をモニターすることで、水素濃度と拡散度合いを見積もることが出来る最適な材料であり、詳細な評価・解析を行うため、初期のターゲット材料として本材料を用いた。酸化物への水素イオンの挿入は、ナノ間隔エアーギャップ中に存在する吸着水分子の電気分解反応を利用し、湿度変化をパラメータとした電界効果による抵抗変化を測定した。湿度が上がるほど、低ゲート電圧でも水の電気分解が進み、水素がVO2内に取り込まれることが分かった。また、イオンの拡散方程式を用いてプロトン輸送速度・濃度の時空間拡散解析を行った。室温では濃度拡散速度が遅く、侵入電界によるイオン拡散が優位となり、ゲート電界により一方向プロトン輸送制御が出来ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおよそ当初の予定通り本年度は400 nmのエアーギャップを持つ3次元電界効果トランジスタを作製することができた。また、湿度の上昇とともに低ゲート電圧において、容易に水素イオンがVO2チャネルに侵入していくことが分かった。また、イオンの拡散方程式を用いてプロトン輸送速度・濃度の時空間拡散解析を行った。これらの知見は、エアーギャップへの電界印加によって生じる酸化物への侵入電界を利用したプロトン輸送・貯蔵が実証できたことになる。本技術の実証は、無電力でのプロトン輸送・貯蔵や一方向プロトン貫通膜応用への重要な布石となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)電界効果による無電力プロトン輸送の評価モデルの構築 前年度に測定してきたデータを基に、ポアソン方程式と非平衡拡散方程式を組み合わせたモデルを構築する。このモデル化により、定量的なプロトン輸送速度・濃度を解析できる。 また、その解析の定量性を評価するため、酸化物表面上でレーザーラマン分光による測定を行う。O-Hの振動モードをモニターすることによって、その強度と空間分布を解析結果と比較することで、その定量性を実証する。 2)電界効果による無電力プロトン輸送の評価モデルの構築 酸化物固体プロトン輸送膜をVO2と同じルチル構造を持つTiO2に代え、同様の実験を行う。TiO2の場合キャリア濃度がVO2と比較して少なく比誘電率が大きいため、電界強度侵入長は長い(数100 nm)と考えられる。TiO2も同様に水素化により電気抵抗率が変化するため上記1)で作成したモデルが適用できると考えている。VO2,TiO2の両者の比較から、定量解析に必要な物質固有のパラメータを導き出し(おそらく、キャリア濃度、比誘電率、イオン拡散係数)、ユニバーサルな定式化モデルを構築するとともに、本手法が、他の材料にも適応できることを実証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたナノインプリントモールドの購入に関しては、現在あるモールドで対応できたことと、購入を予定していた基板については、当初予定していたよりも作製条件出しがスムースにできたので、消費量が減ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費及び、基板購入代にあてる予定である。
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