2016 Fiscal Year Research-status Report
イオン照射アルミナにおける特異な準安定相形成機構の解明
Project/Area Number |
16K14393
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
石丸 学 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (00264086)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 相変態 / イオン照射 / 準安定相 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミナには熱的安定相であるα-Al2O3(コランダム型構造)に加えて、様々なポリタイプ(多形)が準安定相として存在する。準安定相からα-Al2O3への構造変化は熱処理により引き起こされるが、一旦α相が形成されるとその逆変態は起こらない。研究代表者は最近、イオン照射によりα-Al2O3マトリクス中に準安定相を形成し、熱処理に伴う構造変化を調べたところ、安定相から準安定相への構造変化が起こることを見いだした。本研究では、Zrイオン照射を施したサファイヤ(Al2O3)基板に形成される準安定相の熱的安定性を明らかにするため、熱処理時に伴う構造変化を透過電子顕微鏡法により調べた。イオン照射直後の試料では、コランダム型構造を有するAl2O3マトリックス中にスピネル型構造のAl2O3が形成していた。電子回折実験および高分解能像観察により、両者の間にはエピタキシャルな方位関係があることが確認された。この試料に熱処理を施すと、コランダム→スピネル構造相変態が誘起された。コランダム型構造は熱的安定相で、一旦形成されると通常の熱処理では他の相に変化しないことが知られており、今回見出した構造変化は極めて特異である。スピネル型構造の安定性を調べるため、熱処理温度を変化させた試料を観察したところ、この準安定相は800℃~1000℃で存在することが明らかとなった。一方、1000℃以上の熱処理温度では、通常のスピネル→コランダム構造相変態が起こることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目的とする準安定相の存在する温度領域を明らかにすることが出来た。今回はZrイオンをサファイヤ単結晶基板に照射しているが、熱処理温度が高くなると過飽和に含まれるZrかZrO2として析出することが確認された。構造解析の結果、析出物は ZrO2の安定相とは異なる構造を有していることが確認され、当初予期していない結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新たに見出した準安定ZrO2ナノ結晶の構造を決定するとともに、その形成過程について議論を行う。具体的には、以下の要領で研究を遂行する。 (1)高分解能透過電子顕微鏡法およびナノビーム電子回折法を駆使して、ZrO2ナノ結晶の構造を明らかにする。 (2)熱処理温度を変化させることによりナノ結晶のサイズを変化させる。これらのナノ結晶の構造を透過電子顕微鏡法により調べ、準安定相と粒子サイズの関係を明らかにする。 (3)ZrO2はサファイヤ母相に埋め込まれているので、準安定相の形成メカニズムには拘束歪みが重要な役割を演じている可能性がある。そこで、弾性論を用いてZrO2準安定相の形成メカニズムを議論する。
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Causes of Carryover |
平成28年10月に本実験で使用していた透過電子顕微鏡用冷却ホルダーに不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、実験を延期する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた春の学会にて成果報告が間に合わなかったので、秋に開催される学会に参加し、成果報告を行う予定である。
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Research Products
(2 results)