2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14401
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
増田 貴史 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70643138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液体シリコン / シリコンカーバイド / 溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、液体SiCにおけるHの重要性に着目し、その脱離/転移機構を解明することで「脱水素化による結晶成長の制御」を達成することである。より具体的には、脱水素化過程における液体SiC→固体SiCへの転移機構の解明と、その制御となる。必要な研究開発項目を材料・装置・プロセスの3つ、1.液体SiC材料開発、2.脱水素・結晶成長装置の開発、3.結合Hの脱離/転移によるSiC形成機構の解明、と設定した。 「1. 液体SiC材料開発」においては、本研究で当初想定していた新たな「液体SiC」を合成した。炭素源として従来の炭素数6物質(シクロヘキセンやヘキシン)ではなく、炭素数2物質(アセチレン)を用いた「液体SiC」の合成である。ケイ素源である液体Siが、ガス種であるアセチレンと高効率に反応できることを見出した。アセチレンのような小さな炭素鎖を付加した液体SiCを用いることで、脱水素化の過程が追跡しやすくなるだけでなく、SiやCの偏在を防ぎ、より良質な結晶化が期待できる。 「2. 脱水素・結晶成長装置の開発」では、1800℃まで焼成可能な小型焼成炉(フルテック社)を作製した。翌年度はこれをグローブボックス内で立ち上げる必要がある。それにより液体SiCの結晶化が可能となる。 「3.結合Hの脱離/転移によるSiC形成機構の解明」では、慶応大学の羽曽部研究室の協力のもと、物質の分光測定(過渡吸収、蛍光寿命)による水素ダイナミクスの評価を試みた。しかしながら照射光/励起光(300~350nm)により液体SiCが重合して固化(セル壁面にSiCが析出)してしまう事が判明したため、測定データの解釈が難しくなっている。来年度は照射光/励起光を調整して再測定を行う。 今年は「液体SiC」材料の合成が達成できたため、来年度は物性評価と結晶化に注力する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述した3つの研究開発項目ごとに、進捗を説明する 「1. 液体SiC材料開発」。液体SiCを扱うグローブボックスの酸素濃度を落とすための白金/銅触媒が、液体SiCの炭素源であるアセチレンガスと触れると爆発する可能性がある。そのため「液体SiC」の合成自体はできたが、大分遅れてしまった。材料の合成が当初の予定より遅れてしまったため、その後の研究項目が遅れている。 「2. 脱水素・結晶成長装置の開発」。予算の都合により結晶化装置の開発が遅れている。当初は試料の取り扱いも含めて完全大気非暴露の焼成炉を構築予定であったが、予算の都合から、通常の焼成炉をグローブボックスに導入する案に変更した。この案は予算が抑えられる反面、グローブボックスに導入するための備品類の作製に時間を要してしまった。 「3.結合Hの脱離/転移によるSiC形成機構の解明」。上述したように、液体SiCの分光測定において、照射/励起光でSiCが固化/析出してしまう問題が発生し実験が遅れている。「液体SiC」が固化/析出しない波長域を明らかにするための実験を追加で行ったために分光測定が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した3つの研究開発項目ごとに、進捗を説明する。 「1. 液体SiC材料開発」。アセチレンを炭素源とした「液体SiC」の合成手法は目途が立ったため、この研究項目に関しては一旦終了し、下記2つの研究項目にリソースを割く。ただし一点、合成環境を整える取り組みは行う。アセチレンは金属と反応すると爆発性の化合物を形成するが、これが現在の合成環境で大きな課題となっている。大気発火性のある「液体SiC」はグローブボックス内で扱う必要があるが、酸素濃度を落とすための循環塔が白金もしくは銅触媒である。この触媒とアセチレンが接触しないような合成環境を構築する。 「2. 脱水素・結晶成長装置の開発」。液体SiCは大気発火性があるため、試料導入も含め完全大気非暴露の高温焼成炉を立ち上げる。現在高温焼成炉は大気中で立ち上がっているため、これをグローブボックス中に導入する。電気配線の取り込み用フランジと、グローブボックス越しに操作可能なインタフェースを構築する。また脱ガス成分も発火性があるため、失活システムも同時に構築する。そして当該焼成炉を用いて液体SiCの結晶化に取り組む。 「3.結合Hの脱離/転移によるSiC形成機構の解明」。分光測定において、液体SiCの重合が進行しない照射/励起波長の選択が重要となっている。いくつかの分光結果から、照射光250~270nmの範囲では重合が進行しないことを確認した。従って上記波長域を照射/励起波長とした分光測定を行う。そして液体SiCの励起状態の構造を明らかにし、励起による脱水素化/水素転移過程を解明する。分光測定の結果に加えてDFT計算による解析を通し、水素の挙動を明らかにする。
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Causes of Carryover |
材料合成の進捗の遅れに伴い、材料の物性評価(分光測定)の研究項目が遅れているため。また高温焼成炉の仕様変更に伴い、主な支出が2年目の年度に持ち越しになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
可燃大気非暴露の高温焼成炉をグローブボックス内で立ち上げるための設備一式に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)