2016 Fiscal Year Research-status Report
耐熱性歪み可視化シートの創製とモニタリングシステムの構築
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16K14408
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
不動寺 浩 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (20354160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
轟 眞市 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (40343876)
久保 祥一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20514863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造色 / コロイドフォトニクス結晶 / 歪み可視化 / 耐熱性エラストマー / 常時モニタリング / モノのインターネット(IoT) / 画像解析 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 耐熱性・耐環境性を有する歪み可視化シートの材料設計:市販のシリカ粒子(屈折率:1.43)の懸濁液を適切な濃度に調製し既存成膜装置を用いてコロイドフォトニック結晶の薄膜を形成した。当初懸念されたシリカ粒子の沈降現象については懸濁液をポンプで循環することで攪拌させた。この攪拌操作は成膜に影響することなく均一で高品質の結晶(100mm×100mm)が成膜できた。既存のシリコーンエラストマー(DowCorning社製:Sylgard 184や信越化学工業社製:KE-106)は屈折率が約1.4とシリカ粒子との屈折率コントラストが小さいため、構造色がほとんど発色しない。そこで、耐熱性のエラストマーとしてフェニル基を有し屈折率1.57の(信越化学工業社製, ASP-1111A/B)に代替することで構造色の発色するシリカオパール結晶のコンポジットの作製に成功した。 (2) CCD カメラ等を利用した低コストの観察・計測装置を実装:太陽電池によって給電されるカメラ付き省電力マイクロサーバを使って歪み可視化シートを遠隔自動撮影するシステムを組み上げた。これにより電源を確保できない場所にある構造物の歪み状態をリモートセンシングすることが可能であることが示された。 (3) 可視化した歪み状態の電子情報化:スマホ等のカメラから撮影した歪み可視化シートの画像をリアルタイムで解析し、応力が掛かっていない領域以外を脱色表示するアプリを開発した。これにより、歪み状態を常時モニタリングすること、および専門知識を持たない多数の一般人にも歪み評価の手段を提供することが可能であることが示された。なお、前項のリモートセンシング技術と組み合わせれば、人手を介さずにICT技術を駆使して構造物の危険予知をする道が拓かれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)耐熱性・耐環境性を有する歪み可視化シートの材料設計:シリカ粒子の合成は行っていないものの市販シリカ粒子(日本触媒社製,KE-W20, W30)を使用し、かつ成膜時の沈降現象を抑制する課題をクリアできたため、当初計画より前倒しにてマイルストーンをクリアすることができた。一方、初年度に計画していたシリカ粒子の合成は市販粒子を流用することで2年度目に計画を先送りした。 (2) CCD カメラ等を利用した低コストの観察・計測装置を実装:画像解析により歪みの有無が簡単に評価できることが分かったので、当初の計画(色変化の環境光依存性調査)を変更して、情報ネットワークに無線接続可能で、かつ低コストな観測・計測装置の実装を行うことにした。マイクロサーバの節電運用を徹底することで、太陽電池でも駆動可能であることが実験室レベルで確かめられた。 (3) 可視化した歪み状態の電子情報化:当初計画した歪み可視化シートの色分布測定よりも、画像解析評価の方が簡便で汎用性があるので、二年目に予定していたソフトウエア作成を前倒しした。応力に関する情報は「ある・なし」の二択しか得られないものの、リアルタイム評価ができることの方が歪み可視化シートの付加価値を高める点で優位であると判断した。iOSとandroidのアプリが完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) シリカオパール結晶を成膜する支持基盤であるポリエチレンテレフタレート(PET)をポリイミド(PI)への代替を試みる。耐熱温度が延伸型PETで約200℃であるのに対しPIは約400℃でありエンジン、ボイラーなどの高温下での測定において対象範囲が広がることを期待している。また、充填エラストマーについては耐熱性高屈折シリコーンに加え,他の耐熱性フッ素系エラストマーについても検討する。さらに、実際に100℃以上の高温状態で歪み変形を構造色変化として可視化できるか分光スペクトルを測定できるかについても検証する。 (2) CCD カメラ等を利用した低コストの観察・計測装置を実装:初年度に開発した観察・計測装置を、屋外の設置に耐え得る様に改造し、研究所構内の構造物に貼り付けた歪み可視化シートの観察を行う。また、太陽電池によるシステムは鉛蓄電池等を含む関係上かさ高く重いことから、市販の充電式リチウム電池を使った小型化にも取り組む。 (3) 可視化した歪み状態の電子情報化:上記装置から歪み可視化シートの画像を継続的に自動遠隔収集・画像解析するシステムを構築する。時刻や天候によって変化する環境光の変化に対して、歪みの有無の評価がどこまで可能かを見極める。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究課題(シリカ粒子の合成)について市販粒子を流用することで初年度は実施しなかったため関連試薬や器具類の導入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
市販粒子では粒子サイズや粒子の特性に制限があるため、先送りしていたH29年度からシリカ粒子の合成にも取り組む。
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