2016 Fiscal Year Research-status Report
Model synthesisによる鋼組織情報に基づく脆性亀裂停止性能の定量予測
Project/Area Number |
16K14410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴沼 一樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30611826)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脆性破壊 / アレスト / 性能予測 / マルチスケール / モデル統合化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来の研究で未解明であった鉄鋼材料の微視的組織と脆性亀裂伝播抵抗の関係性を定量的に予測するために,脆性亀裂伝播による破壊形態の微視的メカニズムを考慮したミクロスケールモデルと,連続体力学に基づくマクロスケールモデルを連成させるためのモデル統合化(Model synthesis)に関するアルゴリズムを提案し,それに立脚したマルチスケール統合化モデルを構築することを目的とする. 研究1年目ではまず,モデル統合化によるマルチスケール統合化モデルのフレームワーク構築を行った.具体的には,(a) 結晶粒スケールの微視的なへき開亀裂伝播を模擬するミクロスケールモデル,(b) 巨視的な鋼板全体の亀裂伝播から亀裂先端ごく近傍の局所応力を取得する有限要素解析モデル,(c) 鋼板の巨視的な脆性亀裂伝播を模擬する統合化モデルとしてのマクロスケールモデルの開発,を段階的に行った. (a)のミクロスケールモデルでは,結晶粒径や結晶方位の分布を入力条件として与えることから,各試行の結果に大きなばらつきが生じることとなる.このため,マイクロスケールモデルとの連成にはモンテカルロ・シミュレーションを用いた.また,簡単のために,上記の3段階のモデル解析の連成は物理量を各ユニットセルに内挿によって割り当てる一方向の弱連成によって行った. 本モデルを厚さ方向の微視組織に不均一な分布を有する鋼板のアレスト試験に適用し,実験結果との比較を行うことで,モデルの妥当性検証を行った.その結果,亀裂停止時のスプリット・ネイルと呼ばれる特異な亀裂前縁形状,シェブロン・パターンの形成状況に関して,解析結果および実験結果の両者は良い一致を示した.しかしながら,亀裂停止距離に及ぼす温度の影響に関しては実用上十分な精度得るには至っておらず,今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にて,最も重要なモデル統合化の枠組みを確立できた.今後は統合化モデルを構成する要素モデルの精緻化を図り,鋼板の脆性亀裂停止性能として最も重要な特性である,アレスト靭性の温度依存性を定量予測技術の確率を図る.
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Strategy for Future Research Activity |
アレスト靭性値の温度依存性を定量的な予測に向けて,微視的な劈開破壊に伴うエネルギー吸収機構の解明が重要であると考え,その支配因子であるティアリッジ形成に伴う塑性仕事の実験的定量化を試みる. らに,その実験事実を踏まえてミクロスケールモデルのエネルギー吸収量の評価算定式の修正を行い,全体の統合化モデルにおけるマクロ的な脆性亀裂伝播挙動への影響を検証する予定である.
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Research Products
(8 results)