2016 Fiscal Year Research-status Report
高靱性と高強度の両立を目指すナノ・ミクロ階層構造設計のための微視的靱性強化機構
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16K14411
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
若井 史博 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30293062)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 破壊靱性 / 強度 / セラミックス / 靱性強化機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
高靭性と高強度の両立を目指すナノ・ミクロ階層構造設計のための微視的靭性強化機構の探索と解明を目指し,ミクロカンチレバー試験片を用いたサブミクロン領域でのき裂進展抵抗評価技術を開発した.この技術を最近発見されたナノ多結晶スティショバイトの破壊誘起アモルファス化による靭性強化機構の解析に適用した.これは、準安定な高圧相結晶がある臨界応力以上の引張り応力場のもとでアモルファスに相転移する現象を利用した新しいタイプの靭性強化機構であり、古典的なジルコニアのマルテンサイト変態とは全く異なる。 本年度は、大きさの異なるミクロカンチレバー試験片を用いて、ナノ多結晶スティショバイトの強度と靭性を調べた。試験片寸法が小さくなるに連れて強度は増加し、最大強度は6.3GPaであった。荷重-変位曲線は直線で変態誘起塑性は見られなかった。この値はスティショバイトのアモルファス化の臨界応力の下限を与えるものであり、スティショバイトの臨界応力はジルコニアのマルテンサイト変態の臨界応力(約1GPa)よりもはるかに高いことが示された。切り欠きを入れた試験片は安定破壊し、荷重ー変位曲線から、破壊抵抗と亀裂長さの関係であるR-曲線を決定した。スティショバイトのR-曲線は数ミクロンの亀裂進展で鋭く立ち上がり、10.9 MPa m1/2にまで到達して一定となった。変態強化機構の理論より臨界応力が高くなるにつれて亀裂近傍の変態層の厚さは薄くなる。破壊抵抗の立ち上がりに要する亀裂進展長さは変態層の厚さに比例するので、数10ナノメートルという薄い変態層が鋭いR-曲線の上昇の理由であると結論できた。脆く、小さな欠陥から破壊するセラミックスの強度信頼性の向上には、わずかな亀裂進展で破壊抵抗が立ち上がることが重要であり、その点でスティショバイトは構造用セラミックスとして有望であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
合成条件の異なる試料の強度と靱性を比較することにより、転位密度が高く、内部応力の高い材料ほど臨界応力が低下することを見いだした。臨界応力、変態層厚み、破壊靱性、強度の関係にもとづき、破壊靱性、強度を最大化するための材料設計の要点が内部応力の制御にあることを見いだし、材料開発の指針を提唱することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、スティショバイトおよび関連物質についての研究を推進するとともに、微小試験による評価技術を用いて、ナノメートルスケールで作用する靱性強化機構の探索を進める。具体的に階層制御構造とみなせる歯のエナメル質とエアロゾルでポジション法で製造したセラミック薄膜について検討する。
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Research Products
(9 results)