2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14420
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岸本 堅剛 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (50234216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤井 光治 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (20314825)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多谷構造 / 熱電材料 / 有効質量 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子構造計算により多谷構造を有することが期待される物質についてバルク試料体の作製と特性評価を行った。今年度は主に次の二つの化合物について検討した。 1.クラスレート化合物Cs8Zn4Ge42について,その構成元素であるCs,ZnおよびGeを出発原料として,金属管封入法により,不純物を含まない単相の粉末試料を作製した。それを放電プラズマ焼結することによって焼結体試料を得た。焼結体試料のゼーベック係数およびキャリア密度を測定し,それを解析した結果,この化合物の有効質量は3.2 m_e(m_e:自由電子の質量)であることがわかった。この数値は代表的なクラスレート化合物Ba8Ga16Ge30の1.7 m_eよりも大きく,多谷構造が効いていると考えられる。しかしながら,難焼結性のため,現時点では焼結密度は約90%に留まっている。そのため,キャリア移動度が小さく,予想していた高い熱電性能指数はまだ得られていない。引き続き,焼結条件を検討している。 2.ジントル化合物Na2ZnSn5について,無置換体は大気中で不安定であるので,構造安定化のためにSnに対するGe置換を試みた。構成元素であるNa,Zn,SnおよびGeを出発原料として,金属管封入法によりNa2ZnSn5-xGex溶融体試料を作製した。X線回折測定により,無置換体試料では異相としてSnを含むが,Na2ZnSn5結晶構造を有することがわかった。一方,Ge置換体試料は,部分的に,報告されているNa2ZnSn5とは異なる結晶相を含んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クラスレート化合物Cs8Zn4Ge42の試料体の作製に手間取っている。不純物を含まない単相の粉末は合成すみである。しかし,その緻密な焼結体はまだ得られていない;現時点での最高の焼結密度は約90%である。この物質が難焼結性であることが影響している。そのため,比較的大きな有効質量を確認したものの,電気伝導性が期待よりも低く,得られている熱電性能指数としてはまだ低い値に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,候補物質のひとつであるクラスレート化合物Cs8Zn4Ge42について,緻密な焼結体試料を得るために,焼結条件を調整する。また,Na2ZnSn5についても引き続き試料作製と特性評価に取り組む。さらに,別の多谷構造物質について,電子構造計算を用いて探索するとともに,候補物質について試料体の作製および特性評価を行う。
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Causes of Carryover |
試料体作製に関して予期しなかった困難が生じ,その対策に時間が掛かっているため,予定していた実験項目が十分には済んではいない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の対策を考え,実験項目を進める。予算は今年度分と合わせて使用する。
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Research Products
(1 results)