2016 Fiscal Year Research-status Report
非熱平衡反応を利用した新しい低温熱電材料の創生と輸送特性の最適化
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16K14425
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小菅 厚子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30379143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50254371)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 非熱平衡反応 / 熱伝導率 / 電気的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第一原理計算により100-300 Kで高い熱電特性が予測されているGe2Sb2Te5 (GST)準安定相熱電変換材料に着目し、そのバルク状試料を作製、100-300 Kでの低温熱電特性を明らかにすることを目的に行った。今年度は特に、[目的1]準安定相のバルク状試料を作製する上で行ったメルトスピニング法(液体急冷凝固法)と室温高圧プレスが、結晶構造と輸送特性に与える影響の解明、[目的2]本研究で得られた熱電特性と第一原理計算で予測された熱電特性の違いの原因の考察を行った。 その結果、[結果1]メルトスピニング法を用いる事で、GST準安定相を約95 wt.%含んだ試料粉末が作製でき、その粉末を室温高圧プレスする事で、準安定相から安定相の相転移を起こさずに、緻密な準安定相バルク体を得ることに成功した。また、室温高圧プレスにより、試料中に歪みが導入される結果が得られた。GST準安定相バルク体の輸送特性は、歪み・バルク密度に影響を受けて変化した。輸送特性の詳細な解析の結果、これらの変化はシングルパラボリックバンドモデルで説明できることがわかった。さらに、[結果2]本研究で得られた熱電特性と、第一原理計算で予測された熱電特性に違いがある原因は、試料の有効質量の違いに起因している事を明らかにした。以上のように、GST準安定相熱電変換材料の熱電特性についての新しい知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
この研究においては、通常とは異なる作製方法を用いる事で、準安定相バルク状試料が作製できるかどうかという試料作製パートが、最大の難関であり挑戦的なところであった。しかしながら、予想以上にこの部分が上手く進み、当初の研究計画に記載した内容は、「研究実績の概要」で述べた通りほぼ達成することができた。それだけでなく、この手法を用いて、新しい材料作製に繋がるような知見も得られはじめていることから、当初の計画以上に進展しているといえる。さらに、本課題の成果として、以下の3件の受賞があったことも特筆すべき成果である。 [1]日本金属学会2016年秋期(第159回)講演大会優秀ポスター賞 (2016年9月)、"Ge2Sb2Te5準安定相バルク状熱電変換材料の結晶構造及び低温熱電特性の評価"、大本達朗、久保田佳基、山田幾也、 小菅厚子 [2]第13回日本熱電学会(TSJ2016)講演奨励賞 (2016年9月)、“Ge2Sb2Te5準安定相バルク状熱電変換材料の結晶構造及び低温熱電特性の評価”、大本達朗、久保田佳基、山田幾也、小菅厚子 [3]The ITS (Internatoinal Thermoelectric Society) Outstanding Poster Award (2016年6月), “Structure and thermoelectric transport analysis of defect containing CuGaTe2 prepared by room-temperature high-pressure synthesis”, Y. Fujii, H. Funashima, H. Y.-Katayama, I. Yamada, A. Kosuga
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を、試料の組成や作製条件をフィードバックする。具体的には、Ge2Sb2Te5のSbサイトをBiに置換した試料、Ge2Sb2Te5のTe量を調整した試料で、物性をチューニングできる可能性が第一原理計算から予測されていることから、これらの試料を作製する。SbサイトのBi置換試料では、Bi量が増えるにしたがい、準安定相に対する安定相の割合が増える傾向が得られている事から、試料作製条件をあらたに最適化する必要がでてくると考えられる。初年度に得た、結晶構造解析や輸送特性評価の知識や技術を生かし、これらの評価を行うことで、最終的にはマイナス温度域の廃熱を高効率で回収できるような熱電材料の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」で述べた通り、本研究では、新規の試料作製方法を用いる事で、準安定相バルク状試料が作製できるかどうかという試料作製パートが、最大の難関と予測されていた。そのため、試料の作製についての費用を多めに見積もっていたが、予想以上に試料作製が上手くいったため、結果的に今年度の物品費の支出額が少なくなった事が主な原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試料作製にかかる物品費に使用する。そうすることで、試料作製→物性測定から新たな知見を得る→試料作製にフィードバックするという一連のサイクルを、当初の予定より数多く繰り返す事ができるため、本研究計画の遂行の実現をより確かなものとする事ができると考えられる。
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Remarks |
大阪府立大学 大学院理学系研究科物理科学専攻 小菅研究室 http://www.p.s.osakafu-u.ac.jp/~a-kosuga/
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