2017 Fiscal Year Research-status Report
非熱平衡反応を利用した新しい低温熱電材料の創生と輸送特性の最適化
Project/Area Number |
16K14425
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小菅 厚子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30379143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50254371)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 非熱平衡反応 / 熱伝導率 / 電気的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、下記三項目について研究を行なった。
(1)Ge2Sb2Te5母材のSbサイトをBiに置換することにより、電子状態がより好ましいものに変化するという予測に基づき、昨年度確立したGe2Sb2Te5準安定相のバルク状試料を作製する手法を用いて、Bi置換試料を作製し、Bi置換が結晶構造や熱電特性に与える影響について調べた。その結果、Bi置換量が増加する程、安定相に対する準安定相の割合が少なくなる傾向が得られた。また、Bi置換量の増加に伴い、準安定相の結晶格子が膨張する挙動を示すことから、Biは準安定相中のSbサイトに置換されている事が示唆された。Bi置換量が異なる試料の熱電特性は、BiをSbに置換した事により生じる欠陥により、電子状態やフォノンの伝導が影響を受けるだけでなく、安定相と準安定相の割合が異なるという影響も受けることとなり、予想に反して複雑な挙動を示した。 (2)(1)の課題を受けて、Ge2Sb2Te5の作製条件をさらに詳細に調整することで、準安定相単相を得る事ができる作製条件出しを検討した。特に、Ge2Sb2Te5準安定相粉末を得る際に、高周波加熱により溶融させた試料を銅ロール板に吹き付ける際のロール板の回転数、吹付け圧力、溶融試料とロール板間距離が異なる試料をいくつか作製し、その影響を調べた。その結果、ロール板の回転数が、準安定相と安定相の生成割合に最も大きな影響を与えているという事がわかった。 (3)Ge2Sb2Te5の安定相と準安定相の電子状態計算とボルツマン輸送方程式に基づく輸送特性の計算を行った。その結果、安定相については、キャリア密度の高い領域では実験値とよく一致する輸送特性が再現できたが、キャリア密度の低い領域では、これまでの計算結果を上手く再現できないという課題がみつかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度得られた電子状態計算による予測を基に、Ge2Sb2Te5のSbサイトにBiを元素置換した試料を、昨年度確立したGe2Sb2Te5の作製手法と同様の手法を適用する事で作製した。さらに、作製プロセス・得られる構造・熱電特性という関係性の新たな知見を得る事ができたため、研究がおおむね順調に進展しているといえる。第一原理計算による物性予測も、ある程度実験結果と上手く一致するような結果が得られていることから、計算と実験を相互補完的に用いる事で、材料開発を上手く推進できるような下地を整える事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた知見を基に、試料の組成や作製条件にフィードバックする。元素置換を行なう際は、熱電特性を向上させるためだけではなく、準安定相がより安定化するような元素を、第一原理計算により予測することで、今年度の課題をクリアする。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」で述べた通り、元素置換により、準安定相と安定相の割合も大きな影響を受ける事が、今年度のはじめにわかった。したがって、当初は実験に費やすはずであった研究時間を、この問題を解決するための文献調査や第一原理計算に当てた。その結果、物品費の支出額が当初より少なくなったことが主な原因である。
今年度使用しなかった予算については、次年度の研究に使う消耗品で使用するとともに、学会発表や論文投稿費用・オープンアクセス費用に充当する予定である。
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