2016 Fiscal Year Research-status Report
チタンのドライ・セミドライプレス加工における凝着抑制技術の開発
Project/Area Number |
16K14442
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
奥出 裕亮 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部機械技術グループ, 副主任研究員 (10707102)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 凝着抑制技術 / 絞り加工 / チタン / 酸化膜 / 湿り空気 / 高周波振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、容易に金型への凝着が生じるチタンの絞り加工における凝着抑制を目的としている。チタンの凝着は表面の酸化膜が加工中に剥離し、金属の清浄面が露出した箇所にで金型と接触するために凝着が発生するということに着目し、絞り加工中の酸化膜の剥離を抑制することで、チタンの凝着を抑制する方法を提案した。具体的な凝着抑制技術(酸化膜剥離抑制技術)として、「絞り加工が行われる金型内へ湿り空気を積極的に援用すること」と「湿り空気が金型内に円滑に入り込むために高周波振動を金型へ印加」に着目した内容である。そのため、従来のプレス機(絞り加工装置)にはない機能として、湿り空気の圧力、温度等を制御した状態で金型内へ送り込む機構と金型(しわ抑え)に高周波振動を印加できる機構を有する装置の開発が必要である。また、絞り加工の対象となる材料として、純チタンのみではなく、高強度のチタン合金としているため、装置自体の剛性が高く、高強度材料の変形抵抗を超える推力を有する加工装置である必要がある。そのため、交付申請書は3カ年の計画となっており、初年度にあたる平成28年度は上記内容を達成するための機構を備えた絞り加工装置の設計・開発を予定しており、計画に従い装置の設計・開発を行った。具体的には、申請者が先行研究(所属機関内の資金による研究)において、開発した小型サーボプレス装置(純チタン用の低加工力)をベースに、装置の高剛性化と高推力を備えた機構とし、さらには、本研究の最大の骨子となる「湿り空気を金型内へ援用可能な構造」と「金型(しわ抑え)に高周波振動を印加できる機構」を備えた絞り加工装置とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の予定として平成28年度研究計画として、湿り空気および高周波振動の援用が可能なプレス装置の開発を設定し、予定通りに本年度は、円筒深絞り加工中に金型(しわ抑え)への高周波振動が印加可能であり、高比強度のチタン合金に対応可能な加工力を有するプレス加工機および湿り空気の圧力、湿度および温度を制御した湿り空気を送り込むための装置を開発した。開発した装置を用いて、プレス機としての性能(加工速度、最大加工板厚、しわ抑え力の下限~上限値等)の確認と、凝着抑制技術の条件の範囲(湿り空気の圧力、温度等、また、高周波振動の周波数等)の動作確認、およびそれらを複合的に組み合わせた際のいわゆる装置全体としての動作確認を行っている状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度において開発した装置を用いて、純チタンおよびチタン合金を供試材とし、本凝着技術の骨子である湿り空気および高周波振動を援用した円筒絞り加工を行う。凝着の要因である酸化膜の剥離においては、湿り空気の条件(圧力、温度等)および高周波振動(周波数等)の条件だけではなく、供試材となるチタン表面の酸化膜の膜厚、絞り加工速度等にも影響を受けるため、これら加工条件において異なる条件で試験を行いデータベース化を行う。試験結果をもとに、チタンが絞り加工において、酸化膜の剥離を生じる原因で、最も影響を及ぼす加工条件を導出し、湿り空気援用下における酸化膜剥離抑制モデルの構築と酸化膜剥離抑制モデル構築に伴った凝着抑制モデルの構築を行う。
|
Causes of Carryover |
交付決定額の範囲内で装置を開発する必要があったため、仮設計の段階から再設計を行い、本研究の主題である凝着抑制技術(湿り空気の援用と高周波振動援用)以外の箇所において、コンパクト化を図ったため、その差額で次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究は、凝着抑制技術として、A.湿り空気の条件(圧力、温度等)、B.高周波振動の条件(周波数等)、C.供試材の条件(材質、酸化膜の膜厚、陽極酸化・大気酸化と酸化膜の精製法等)、D.加工装置としての条件(加工速度、しわ抑え力等)、E.加工条件(金型の形状、パンチの形状)において、それぞれ異なる条件下で試験を行い、酸化膜が剥離する条件から凝着抑制モデルを構築するう予定であるが、E.の金型・パンチの形状において、次年度使用額を使用し、加工条件を増やすために使用する予定である。
|