2016 Fiscal Year Research-status Report
高密度ナノ発泡によるポリマー系ナノコンポジットの階層構造制御
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16K14460
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木原 伸一 広島大学, 工学研究院, 准教授 (30284524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝嶌 繁樹 広島大学, 工学研究院, 教授 (10188120)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高分子ナノ空孔制御 / IPN発泡体 / 超臨界流体 / CNT / フッ素系ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
有機・無機ハイブリット系のポリマー材料開発が盛んに行われているが、ポリマー中に分散した粒子群をどう三次元的に階層性を持たせて配置し、界面相互作用を顕在化させ機能発現させるか、は現在でも重要な課題である。本応募課題では、①ポリマー発泡過程で気泡が成長する拘束空間を形成してナノ発泡を形成する方法、②ナノ発泡させた気泡界面に金属をコーティングする、従来の視点とは異なるポリマー系ナノコンポジット材料を創製する方法を提案する。本研究の中心的な課題は、ナノスケールの気泡を高密度で発生させ気泡合一を抑制する、基礎的であるが挑戦的な課題であり、従来達成されている1000倍以上の気泡の高密度(18乗個/cm3以上)を目標とし、微細で高密度な気泡をつかってナノ粒子群の相互作用を顕在化させた機能性ナノコンポジット材料の開発を目指す研究である。 本年度は以下の通りである。 【IPN構造形成】ナノ発泡制御を目的として部分的に架橋構造を形成させるため、両末端にビニル基を複数もつフッ素系オリゴマーの末端処理を行った。次に、合成した官能基付きフッ素系オリゴマーとUV架橋用の光重合開始剤をいれ、超臨界二酸化炭素のポリマー相の可塑化効果を利用して100℃、120℃、140℃の低温で混練した。窒素雰囲気でUV照射しフッ素系オリゴマーを架橋し、semi-IPN構造を形成し、SAXで分散や架橋不均性に由来するミクロ構造が形成されていないことを確認した。なお温度が高いとオリゴマーの蒸発が顕著となることも分かった。一方、カーボンナノチューブ(CNT)の解繊条件を明らかにするために、汎用ポリスチレンにCNTを導入し混練条件をふり、解繊条件を探索したところ、CNT欠損を少なくして解繊するためのせん断応力に閾値があることが分かった。 【高密度ナノ発泡技術の開発】低温での二酸化炭素含浸用のシステムを設計・構築するための設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的までにはまだ検討する項目はあるが、申請時に予定していた内容に従ってほぼ予定通りに発泡材料の開発および装置設計を行った。IPN構造材料の開発において、当初予定した混練によるCNT導入では、超臨界二酸化炭素中の高温・高圧混練では低粘度液体あるいは蒸気となって、CNT解繊に必要なせん断応力を作用することはできず分散は全く良くなった。そのため、CNT解繊条件を明確にするため、貴重な本サンプルを消費するよりは、汎用のポリスチレンを用いて、レオロジー的観点からCNTを解繊する条件を見いだした。この条件に合致するように末端処理したオリゴマーにCNTを解繊した状態で分散する予定である。一方で、グラフェン導入も検討したかったが、グラフェンは混練できる量を購入などで確保できなかった。そのため、グラファイトからグラフェン化をはかる方法(超音波破砕、酸処理)を検討した。しかし、XRD測定からグラファイトの積層間は変化がなく、単純な方法ではグラフェン化されないことが分かった。これも次年度以降も材料探索して対応を図る。装置設計では低温冷媒の導入の断熱や高圧配管の強度が厳しいことが分かり、実験条件の圧力をやや低くする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に設計した高圧発泡システムを作り、低温での二酸化炭素含浸による発泡実験を行う。二酸化炭素の溶解度は、文献などを参考にして設定するが、フッ素系ポリマーについては申請者らが測定して評価する。対象材料の発泡温度は、本研究では独立発泡体を狙うので、30wt%程度の溶解量を保持した条件で、試料のガラス転移温度の数十℃上の温度で発泡させる。昇温発泡だけでなく、減圧発泡も検討するが、昇温発泡の方がポリマー相の運動性から気泡発生数は多いと期待される。本研究は、まずは高密度ナノ発泡の作製が目的であるので、CNT導入したIPN化した材料を作成し、それをナノ発泡後サンプルを取り出し、断面の気泡径やサイズ分布をSEM画像から画像処理して、ナノ発泡数密度が最大となる温度・ガス溶解等のプロセス条件を探索する。semi-IPN構造に用いたオリゴマー長の影響を比較し、ナノ発泡形成に空間的な拘束条件を与えているかどうかも判断する。高密度ナノ発泡(高密度1018個/cm3以上)とするために、二酸化炭素の溶解度を大きくしても破泡しないように炭素系材料と架橋点を導入しているが、単純に、炭素系材料の階層構造形成(気泡の表面層とポリマーの内部層、また、試料の表面のスキン層形成から内部構造)も観察評価する。この結果は、機能性構造部材を発泡誘起のモルフォロジーで制御する方法に繋がるので重要な知見と考える。最後に作製したナノ発泡体の製造法を使って、気泡界面に金属被膜を作製する方法を検討する。気泡表面の電気導電性と炭素系材料との親和性を高めた階層構造を考えて、金属錯体はCu錯体やNi錯体とし、金属錯体は、水素ガスなどを用いて還元する。金属被膜はsemi-IPN構造にトラップされて安定化されると思われる。
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Causes of Carryover |
本研究にて、本年度ではグラフェン購入が高額であったため安価なグラファイトを元にグラファイトを用いた実験を行ったこと、また、高圧混練機に使用している高圧用シール材については、2016年後半から適合するものが少なくなってきている印象であるため、販売元との調整を行い購入を一時保留したため、その分が余る形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、実験消耗品への充当金額が少ないので、高圧混練機の高圧用シール材の購入に充てる。また、グラフェンが安く手に入りそうなので、それに充当する計画である。
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Research Products
(2 results)