2016 Fiscal Year Research-status Report
腎臓を模倣した膜晶析装置を用いた尿路結石の発生機構および抑制機構の解明
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16K14464
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小堀 深 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (70329093)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 尿路結石 / 膜晶析装置 / 腎臓 / RO膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の基盤となる装置の検討および条件の探索を中心に進めた。はじめに、耐圧性樹脂セルにRO膜をセットし、窒素ボンベより加圧することでシュウ酸カルシウム溶液の濃縮を行い、RO膜上に結晶化させた。耐圧樹脂セルとして攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC, UHP-62K)を用い、RO膜は、東レ(株)製の架橋全芳香族ポリアミド系膜 (UTC-70U)を使用した。まず、RO平膜を円形(62 mm φ)に切り出し、ウルトラホルダーに取り付け、原尿に模して調製した試料溶液を200 mL供給し、37℃の恒温容器内へ入れた。その後、窒素ボンベで加圧して既定濃縮度まで濃縮した。濃縮終了後、使用したRO膜を凍結乾燥し、その膜面上を顕微鏡で観察した。さらに、結晶粒径分布及び結晶個数密度を測定した。この実験を通じて、圧力や初期濃度と、膜面上の結晶の核化や成長挙動の相関を観察することができた。 ここまでの膜晶析装置は回分装置であり、腎臓での濃縮を模した濃縮度まで濃縮し、得られる結晶の観察を行ったものである。しかし、さらに大きく結晶成長させる場合や、それに続く凝集形態の確認には、回分装置では観察が難しくなる可能性がある。そこで、リザーバーを用いた試料溶液の連続供給を可能とした実験系も検討した。装置の改良を進めることで、生体の様々な状況を再現できる実験系が構築できた。平均濃縮速度を算出すると、連続系の方が回分系より遅いことが分かり、その値から連続系の方がより生体の腎臓の濃縮を再現できていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に研究の基盤となる装置の検討および条件の探索をする目標については、計画通り到達できた。また、膜面上の結晶の観察や成長挙動については、当初予定よりも詳細に検討をすすめることができた。また、回分装置から連続装置に発展させる計画についても、予定通り進めることができた。一方で、陰圧で濾過を促進させる機構については目標まで到達せず、次年度以降に早期に確立させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに、減圧式の膜濃縮晶析装置の確立を進める。減圧式の膜濃縮とは、加圧式のように溶液側から圧力をかけるのではなく、膜の下部から減圧することによって、大気圧との圧力差を駆動力として濃縮を行う手法である。この手法において溶液側は開放系となり、溶液のサンプリングを容易に行うことができるため、溶液中のイオン濃度変化を経時的に測定することが可能となる。これにより、さらに詳細な結石生成プロセスの検討が可能となる。 さらに、共存物質の影響の検討を行う。クエン酸は、尿中に含まれている物質のひとつであり、生体内回路の中間物である。クエン酸は主にレモンなどの食物に含まれており、尿路結石の阻害作用を示すことが知られている。クエン酸によるシュウ酸カルシウム結晶の析出抑制は、キレート作用による阻害や、ク溶性によるシュウ酸カルシウム結晶の溶解度上昇などに起因することが予想されている。ク溶性とは、クエン酸イオンを含む溶液に物質が溶解しやすくなる現象である。本研究においては、クエン酸のク溶性の効果が大きいと予想している。特にシュウ酸カルシウム結晶の溶解度に対して、クエン酸イオン添加が与える影響に焦点を当てる。まずクエン酸イオン濃度を変化させたクエン酸水溶液を調製し、各溶液に溶解するシュウ酸カルシウム結晶量を測定する。この溶解度測定の結果をもとに、クエン酸イオン添加量を変化させ、原尿を模した試料溶液を調製し、膜濃縮晶析を行いシュウ酸カルシウム結晶の析出挙動変化とクエン酸イオン添加の関連性を調査する。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であった連続装置に用いる減圧装置に関して購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に予定の物品を購入し、計画を遂行する。
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