2018 Fiscal Year Research-status Report
腎臓を模倣した膜晶析装置を用いた尿路結石の発生機構および抑制機構の解明
Project/Area Number |
16K14464
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小堀 深 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (70329093)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 尿路結石 / 逆浸透膜 / 晶析 / 結晶 / クエン酸 / マグネシウムイオン / 結晶形状 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年本邦では、食生活の変化などにより尿路結石の罹患率が上昇している。尿路結石を生体内で起こる晶析現象であると考えるなら、工学的な評価が可能となる。そこで本研究課題により、腎臓で行われる原尿の濃縮機構を実験室での逆浸透膜上に再現し、膜面上に結石を析出させて客観的で再現性のある定量解析を行うことを目的とする。 研究の基盤となる装置については、攪拌型ウルトラホルダーを用い、膜にRO膜を応用した。原尿に模した試料液を窒素ガスにより加圧し、膜面上で濃縮させて結晶を析出することに成功した。また、加圧方式を変化することで、結晶の析出過程を制御し、結晶形状の違いを観察できた。 次に、共存物質としてクエン酸の効果を確認した。クエン酸が尿路結石の生成を阻害することは医学的に確認されているが、その阻害機構はわかっていない。本研究により、クエン酸の存在により結晶形態の変化が起こり、その後の成長過程が変化することがわかった。これは、結晶自体の析出量には大きな影響を与えないが、形態の違いにより炎症機構への影響が大きいことを示すものであり、尿路結石の発生防止や再発予防に活かせる知見となった。 また、マグネシウムイオンの影響も調べることができた。マグネシウムイオンの共存により尿路結石の原因物質であるシュウ酸カルシウムの水への溶解度が変化することが確認できた。この結果により、尿路結石の抑制効果を発現できるマグネシウムイオンの規定量を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに限外濾過装置を応用し、腎臓の集合管で起きる尿濃縮機構を再現することができた。また、結石の疎外作用を示すクエン酸やマグネシウムイオンに関し、その濃度効果について詳細に検討できた。このように、研究計画に従い、おおむね順調に進めてきたが、これらの研究成果を論文投稿や海外での学会発表を行いまとめる作業が残っている。より詳細に実験条件などを検討し、よりよいものに仕上げるため、研究機関を1年延長する。
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Strategy for Future Research Activity |
論文にまとめる際に、必要な補充実験を中心に行っていく。その際、再現性や定量性を重要視し、工学的な評価として耐えうるものに仕上げていく。また尿路結石の主な構成物質はシュウ酸カルシウムだが、一部尿酸を主にしたものも生じる。この尿酸に対してもシュウ酸カルシウムと同様の評価が可能であるため、各種濃縮状況による変化や、共存物質の影響を測定することも同時に進めていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた膜濃縮装置を簡略化させ、低価格のもので代用できる工夫をした。また、連続装置の購入を予定していたが、回分装置で十分量の結晶を得ることができたため、物品費に関して繰越しが生じた。本年度は装置に関して再度購入の必要を検討し、追加実験や研究成果発表に使用していきたい。
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