2016 Fiscal Year Research-status Report
超音波精密照射法を用いた均一組成・低分散度コポリマーの合成プロセスの確立
Project/Area Number |
16K14467
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保 正樹 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50323069)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 反応工学 / 超音波 / コポリマー / 分子量分布 / 反応速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新規なポリマー合成法である超音波ラジカル重合法において,超音波照射条件を精緻に制御することで分子量分布の極めて狭い、かつ組成の均一な共重合ポリマーを精密合成するプロセスを構築することを目的としている。具体的には,感温性を有するポリN-イソプロピルアクリルアミドと強度を付与するポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合コポリマーを対象として,超音波照射条件を変更することによってラジカル発生速度、重合速度、生成ポリマー分解速度を精緻に制御し、分子量分布の指標である分散度を1.5以下に保持しつつ、ポリマー組成が均一な共重合コポリマーを合成するプロセスを確立することを目指している。 今年度は、先ず、基礎的知見として、超音波強度一定の条件下でポリN-イソプロピルアクリルアミドとポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合ポリマー合成実験を行なった。そして、1.合成実験における操作因子と生成共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成との関係、2.生成した共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成と温度応答性との関係を明らかにした。ポリマー生成量ならびに分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリマーへの転化率、数平均分子量、分散度の経時変化を測定した。生成ポリマーの共重合組成はNMRを用いて測定した。温度応答性は、ポリマー含有溶液の光透過性の温度依存性を分光光度計で測定することで評価した。次に、超音波照射による共重合ポリマー合成の機構を解明するため,3.超音波照射下でのラジカル発生速度、4.生成ポリマーの分解実験による分解機構、をそれぞれ明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目に、1.操作因子と生成共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成との関係、2.生成した共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成と温度応答性との関係の解明を行うこととした。また1年目から2年目にかけて、3.超音波照射下でのラジカル発生速度の評価、4.生成ポリマーの分解実験による分解機構の解明を実施する予定であった。 項目1と2については、計画通り、生成共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成との関係、ならびに生成した共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成と温度応答性との関係を調べることができた。項目3の超音波照射下でのラジカル発生速度については評価法の検討に留まり、やや遅れている状況である。一方で、項目4の生成ポリマーの分解実験は手法を確立してデータ取得、解析する段階に至っており、当初の計画以上に進んでいると言える。項目3と4のいずれも、2年目にかけて実施する計画を立てているため、全体としては概ね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目に引き続き,3.超音波照射下でのラジカル発生機構の評価、4.共重合ポリマー分解実験による分解機構を検討し、反応機構の解明を行う。実験によって獲得した知見をもとに、5.超音波照射下における共重合ポリマー生成速度論モデルの構築を行う。重合ならびにポリマー分解機構は次の通りである。溶液への超音波照射によって,溶媒あるいはモノマーが熱分解し,ラジカルが生成する。発生したラジカルを開始剤として共重合成長反応,それに続くポリマーラジカルによる停止反応(再結合,不均化)が進行する。また,せん断力によるポリマーの分解によってもポリマーラジカルが生成する。このうち,ラジカル生成反応およびポリマー分解反応は、超音波照射条件に依存するため,実験的知見に基づいて超音波強度依存性を考察し,速度論モデルとの比較によって妥当性を検証する。そして、実験的知見およびモデルによる数値シミュレーションを用いて、6.共重合ポリマーの分子量、分散度、共重合組成を設計、制御するための方法を確立する。なお、研究代表者は、ホモポリマーに関する数値シミュレーションを既に実施しており、本研究ではコポリマーで生じる交差反応を組み込むことで、コポリマーを対象とした数値シミュレーションの構築が可能であると考えている。
|
Research Products
(1 results)