2016 Fiscal Year Research-status Report
多環芳香族分子からの効率的な水素製造を図る回転ディスク型マイクロリアクターの創製
Project/Area Number |
16K14470
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 助教 (80548884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多環芳香族分子 / 回転ディスク / マイクロリアクター / ニッケル / 水蒸気改質 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロリアクターは,優れた温度制御で効率的な物質変換を実現するが,リアクター内の層流流れを改善することでその変換機能がさらに加速する。本研究では,マイクロ空間内の物質拡散性を反応場自体の機械的回転で促進した新しいリアクター,すなわち“回転ディスク型マイクロリアクター”を創製し,水素製造反応へ適用する。炭素析出耐性に優れた触媒成分を回転ディスク上に構築し,炭素析出が問題となる多環芳香族分子の水蒸気改質で水素を製造することに挑戦する。 今年度はマイクロリアクター上に触媒成分を構築するための基盤技術の確立を図った。具体的にはゾル-ゲル法と無電解めっき法で金属基板上にNi/Al2O3触媒成分を付着した構造体触媒を創製し,多環芳香族分子のモデル物質であるナフタレン水蒸気改質特性を評価した。その結果,以下の事項を明らかにした。Ni/Al2O3構造体触媒は比較的高い活性を示し,安定性も優れることがわかった。粒状触媒と比較すると構造体触媒は安定に水素が生成した。また触媒活性や炭素析出耐性の向上を目的としてアルミナ担体へMg, Y, Zr, Ceを添加した結果,Ce添加が効果的であることを見出した。Ceを添加したNi/CeO2-Al2O3触媒は,3時間の反応においてナフタレン転化率90%以上を維持し,優れた触媒特性を示すことがわかった。Ni/CeO2-Al2O3触媒が優れたナフタレン水蒸気改質特性を示したのは,Ce添加によるAl2O3担体中の10-100 nmの大きさを持つ細孔分布の変化が,析出炭素による細孔閉塞を回避したためであると考えられる。次年度は,本知見を活かし回転ディスク上に触媒成分を構築し,連続的な水素製造システムを創製する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度で回転ディスク型マイクロリアクターの開発を予定していたが,多環芳香族分子から水素製造を図るための触媒システム構築の検討に時間を費やした。連続的な水素製造を図る触媒成分の探索が終了したため,それらの知見を応用して回転ディスク型マイクロリアクターを開発する。本検討は既に着手し始めており,早期に遅延を取り戻せるものと考えている。なお次年度は,本研究に係る人員を増加して遅延を取り戻すことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた知見を活かして,金属基板上にNi/CeO2-Al2O3触媒成分の構築を図った回転ディスク型マイクロリアクターを製作し,多環芳香族分子を連続的に変換する。開発リアクターについて動作性を確認した後,機械的回転と物質変換機能との関係について検証する。具体的には,ナフタレンの水蒸気改質を行ない,反応性を500~800℃の反応温度,100~1,000h-1の原料空間速度(S.V.)条件で検討し,物質収支の健全性を確認しつつ,リアクターの動作性を評価する。また回転スピードや回転方向などのトルク制御が,物質変換機能に及ぼす影響を調査する。ディスク回転数を0~数千 rpmまで変化させて,反応性を評価する。非回転条件で得られた結果と比較し,機械的回転と反応性の向上との関連性を調査する。Thiele数(φ)と触媒有効係数(η)の関係性を明らかにし,物質移動過程が反応性に及ぼす影響を明らかにする。続いてシャーウッド数(Sh)のレイノルズ数(Re)依存性を調査し,このような機械的因子をレイノルズ(Re)数,シャーウッド(Sh)数などの無次元数で整理し,化学的因子との関連性について明らかにする。得られた知見をもとに,リアクターのナンバリングアップを図った高速大量処理能力について検討し,多環芳香族分子からの水素製造プロセスの構築を図る。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた回転ディスク型リアクターの開発が遅延し,次年度にて開発することになったためである。多環芳香族分子からの水素製造システムの開発は,これまでにほとんど報告例がなく,新規な反応系である。炭素析出が容易に起こりやすく,連続的に水素製造を図る触媒システムに時間を費やした。最も困難と考えられる検討事項を解決したため,次年度は回転ディスク型リアクター開発を行ない,予算を執行できるものと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では回転ディスク型マイクロリアクターを製作するため,リアクターの加工費,アルミハニカム基材,チタン基材の陽極酸化や無電解めっきによる触媒反応場の構築にに係る経費を必要とする。また継続して反応装置改修に係るステンレス材やHPLCポンプ等も必要である。さらに製作した新規触媒システムの部性評価として基材のBET表面積,FE-SEMによる表面形態,TEMによる粒子モルフォロジーを測定するために係る経費を予定している。
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