2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14489
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80431675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 健 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10293317)
鈴木 敦 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60467058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 毛包 / 毛髪再生医療 / マイクロデバイス / PDMS / 自己組織化 / 毛包原基 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、毛髪疾患の最先端治療として、細胞を用いて毛髪を再生する毛髪再生医療が注目されている。一般に、毛髪組織は胎児期に上皮系細胞と間葉系細胞の相互作用により毛包原基が形成されるプロセスから始まる。既往の研究で、このような毛包原基が生体外で構築できることが報告されている。そしてすでに、作製した毛包原基をマウス皮下に移植すると、毛が再生されることが示されている。ただしこの手法では、上皮系細胞と間葉系細胞のペレットを遠心機でそれぞれ作製し、ゲル内に隣接するように配置する必要がある。つまり、数万本の毛髪を再生することを考えると多大な労力が必要となる。そこで本研究では、均質かつ大量の毛包原基を調製する技術を開発した。本研究のアイディアは、懸濁状態の2種類の細胞から自発的に毛包原基が形成されるという現象を発見したことに基づいている。すなわち、上皮系細胞と間葉系細胞を1:1の割合で混合し凝集体を形成させると、凝集体内で自発的に同種同士に分離し、培養3日後にはペレットを用いた場合と同様の毛包原基が形成された。この毛包原基をマウス皮下に移植すると、移植部位から毛髪が形成された。この現象をベースに、直径1 mm程度のマイクロウェルを多数設けたデバイスを設計し、毛包原基を一度に大量に調製できるデバイスを開発した。このデバイスで作製した毛包原基をマウス皮膚に移植したところ、毛髪が再生することを確認した。さらに、間葉系細胞をヒト毛乳頭細胞に置き換え同様の実験を行ったところ、毛包原基が形成され、またマウスへの移植実験において毛髪が再生されることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
毛包原基アレイデバイスは、酸素透過性の高いポリジメチルシロキサンを用いて作製した。これは、デバイス底面から酸素供給のない従来型のデバイスでは、毛包原基が良好に形成されないという結果が得られたためである。つまり、デバイス上に細胞凝集体が高密度にアレイする場合、培地上面からの酸素拡散では供給が不十分となるためである。さらに、毛包原基のサイズ(構成細胞数)が大きくなると、形成される毛髪の数が増加するという特徴も明らかにした。ヒト臨床応用に向けて、2種類のうち1種類の細胞をヒト細胞に置き換えたキメラ型の毛包原基を作製し、毛髪が再生できることも示した。また再生毛包の解析など平成29年度の計画を一部前倒しで進めていることから、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果は、開発した手法により作製した毛包原基が正常に近い機能を有していることを示唆している。ただし、毛髪が成長する効率は毛包原基を構成する細胞数に依存して20~80%と幅があること、毛髪の伸長する方向は未だに制御できていないことから、正常な毛包組織とどのような差異があるのか詳細に解析する必要がある。特に、遺伝子発現やタンパク発現をFISH法や免疫染色により実施し、時空間的な解析を行う。 また、毛包原基を大量に調製できても、これを移植する技術がなければ、毛髪再生医療は実現できない。本研究で開発する毛包原基アレイデバイスは、一定の間隔で毛包原基を配置することが可能であることから、このデバイスそのものが移植用デバイスとして機能する、あるいは配置を維持したまま毛包原基を移行することが可能な移植用デバイスを開発する。この開発には研究代表者らの有するフォトリソグラフィなどの微細加工技術および光架橋性ハイドロゲル技術を用いる。一つの試作案は、マルチニードルを備えたものである。現在の治療法として、後頭部から毛包を採取して前頭部へと移植する方法があり、使用するニードル直径などの情報を参考にする。一方、これまでの予備検討で、毛包原基の移植深さが毛髪再生において重要であり、表皮の下にある真皮層に移植する必要があることが分かっている。したがって、移植デバイスは、この適切な深さに到達できるよう設計する。
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Causes of Carryover |
継続課題であり、また少額であるため、O円に調節しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品に組み入れて使用する。
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Research Products
(8 results)