2017 Fiscal Year Annual Research Report

Development of methods for the enzymatic synthesis of 18O-phosphate

Research Project

Project/Area Number	16K14492
Research Institution	Hiroshima University
Principal Investigator	黒田章夫広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (50205241)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2018-03-31
Keywords	酸素-18安定同位体リン酸 / 酵素合成法 / 亜リン酸 / ポリリン酸 / 動態モニタリング
Outline of Annual Research Achievements	リンには安定同位体がないため、野外でのトレース実験が難しいとされている。しかし、酸素の安定同位体(18O)を利用すれば、酸素-18安定同位体リン酸（18O-リン酸）として標識できると考えられる。18O-リン酸の国内生産が実現できれば、肥料に限らず、畜産、食品・医薬品製造や環境分野などリン酸の生物学的利用能の評価や動態モニタリングが可能になり、広範な産業分野で活用される可能性がある。置換数が異なる18O-リン酸を作る酵素合成法を確立するために、いくつかの酵素合成法の比較検討を行なった。亜リン酸(H3PO3)は、酸化数+3のリン化合物である。18O-H2O中で酸化することで、18O-リン酸を作り出すことができる。酵素を添加しない（加熱による）亜リン酸からリン酸への酸化反応を行なった結果、生成した18O-リン酸の割合は2％程度にとどまった。主に溶存酸素によって亜リン酸が酸化されたことが原因であると考えられた。亜リン酸デヒドロゲナーゼは、NADを補酵素として、亜リン酸を酸化してリン酸を生成する酵素である。18O-H2O中で反応を行えば、18O-リン酸が効率よく合成できた。大腸菌由来アルカリホスファターゼは、亜リン酸を酸化することが知られている。しかし、亜リン酸の酸化効率自体が非常に悪いことがわかった。また、ピロホスファターゼによるピロリン酸の加水分解を18O-H2O中で行えば、一カ所18Oで置換される。この反応は可逆的に起こるため、最終的に平衡状態に達した場合には、4カ所置換された18O-リン酸が生成した。また、ポリリン酸分解酵素はポリリン酸を加水分解する酵素である。本酵素を利用することで1カ所置換された18O-リン酸を作り出すことができた。